ほどかれた鎖 呂紫 微甘小鳥の囀りで呂布は目を覚ました。
昨晩、裸のままで眠ってしまったからか少し肌寒かった。
横に目をやると紫鸞は未だに夢の中にいた。眠る表情はとても穏やかで柔らかかった。
紫鸞の体には無数の赤い花が咲いており、そんな姿を見て呂布は、笑みがこぼれる。
またこうして自身の手中に収めることが出来て満足していた。
頭をひと撫ですると紫鸞がそれに応えるかのようにモゾモゾと動く。
その姿が愛しく、呂布は紫鸞の額に口づけを落とす。唇の感触に気づいたのか、紫鸞が薄っすらと目を開ける。
「起きたか。」
昨日とは違う優しい声に紫鸞も表情が緩くなる。今度は頬に一つ口づけをする。
「・・・?夢・・・じゃない・・・?」
寝ぼけている紫鸞に呂布は軽くあざ笑う。「夢じゃない。」と伝えた。
ぺたぺたと呂布の身体を触り、紫鸞はまた涙を零す。
本物だ。本物がいる。と。
呂布は紫鸞の腕を掴み、押し倒す。
「あまり滾らせるようなことをするな。」
紫鸞の太ももに呂布の性器が当たる。それはすっかり熱を帯びており、固くなっていた。ぶわっと紫鸞の顔に熱が集中し、目を逸らした。
可愛い奴め。といじらしく笑い、唇に噛みつく。
ぢうっといやらしい水音がさっきよりも大きく鳴り響く。
紫鸞は酸素を求めて大きく口を開けるがすべて呂布の大きな口によって塞がれる。ねっとりとした舌の感触に紫鸞は、快感を覚える。
唇を離すと綺麗な銀の糸が伸びる。紫鸞は呼吸を整えながら呂布に縋る。
「無名。お前は俺を試しているのか?・・・面白い。」
くくっと笑うと優しく抱きしめる。いつものようにがっつかない呂布に対して紫鸞は少し不満げの様子だった。
幾度か色を掛けてみるが向こうが手を出すことはなかった。
ふと冷たい風が頬を伝い、紫鸞は一つくしゃみをする。
「このまま寝たのだ。寒いだろう。」
呂布は肩まで布団を掛けてあげた。
「ずっとこのままでいたい。」そう小声で紫鸞が零すと呂布はまた笑って頭を撫でる。
大きく骨ばった手で触れられるのが心地良いのか紫鸞は満足してまた眠ってしまった。
「本当に、よく眠るやつだ。」
人差し指で涙痕をなぞる。涙で湿った指を口に含むと、優しい味が口の中に広がった。
呂布は煽られた欲の熱情を冷ますために今までの記憶を思い出していた。
前世で下邳城の底に叩きつけられる前に交わした約束。告げられた言葉。
現代に産まれてからつい先日まで城跡で待ち続けていたこと。
出会い、愛を確かめ合えたこと。
思い返せばとても長い道のりだった。と一人、思いに耽る。
「お前はこの呂奉先の視界に入ったのだからな。」
前にも言ったような気がするこの台詞。
もう二度と離すつもりなどない。この身体も、心もすべて自分のもの。
この先もずっと。
紫鸞の瞼に一つ口づけを落とし、次に目が覚めるまでひたすらに優しく見守っていた。