私より先に逝くか、お前も。
思わず呟くと、幼平は少し笑った。
――他のものは若かったけれど、自分は相応に歳を取りましたので。そろそろお暇です。
横になったまま、皺の寄った手で拱手する。傷よりももう皺の方が目立つ手だ。
生まれ年など覚えていないと言う幼平だが、おそらくは私より十や二十は歳上だろう。老いれば死ぬ。
公瑾や公績は若過ぎた。子敬や子明もまだ若かった。そういった例外もあるが、人は皆老い、死ぬ。
私もまた兄の死んだ年齢などとうに超え、父の死んだ年齢も超えたが、まだ老いたとは言えぬ歳だ。
ただ、逝くものたちを見送っている。
幼平の療養する部屋を出る。
城に設えた部屋で病身の忠臣を憩う、それは私の我儘で、幼平も本当なら家族と過ごしたいのかもしれない。
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