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    そらめも3巻推敲中に生えた間話。アキとアリスのだべりは指に馴染む。

    間話フィスナー家の敷地をジョギングペースでぐるっと二周したところで、体力の限界が先に来た。膝に手をつきぜーはーと肩で息をするぼくに、アリスが驚愕とばかりの顔で駆け寄ってくる。
    「ウッソだろお前……まだ二周だぞ」
    「いや無理ごめん……ちょっと休憩……」
    フィスナー家の敷地の広大さを舐めていた。こっちはプリベット通りを走る気分でいたのに、いきなりハーフマラソンコースをご用意された気分だ。
    フィスナー家に滞在して一週間、そろそろ屋敷の掃除に目処がついてきた。来週あたりには使用人も何人か戻ってくる手筈にもなったらしい。少し時間が出てきたのを幸いと、ぼくはアリスに「ぼくもトレーニングにご一緒させてほしい」とお願いしたのだった。
    アリスが元々一通りの体術をきちんと学んできているのは、普段の身のこなしから何となく感じていた。実際聞いてみたところ、確かに剣術・体術・格闘術は幼い頃から専門の教師を付けられ叩き込まれていたらしい。
    ホグワーツに入学してからは指導を受ける機会も無くなったものの、それでもたびたび身体が鈍らないよう走りに行っていたようだ。道理で、普段朝には弱いくせにたまに早起きして外に出てってるなとは思っていたよ。
    なんだよ一人で格好つけちゃってぼくも誘えよとごねたところ、アリスはすこぶる嫌そうな顔をしつつも最後には渋々了承してくれた。そしていよいよ迎えた本日、だったのだが────
    「どーよ、俺と走った感想は」
    「思った以上に体力の差が歴然としてて凹む」
    「そいつは自明だったろ」
    そりゃ自分だって運動神経が高い方だとは思っていなかったものの、それでも割と身軽な方だし徒歩だったら長距離歩いても平気だし、と慢心していたのは否めない。いやうん、確かに慢心していた。今日ので思い知った、ぼく、同級生の中でも体力ない方だ。小柄だし筋肉ないしで頼り甲斐のない男だった。
    「それにしても、急に体力作りに励むなんてどーしたよ」
    手持ち無沙汰なのか、アリスがストレッチをしながら尋ねてくる。四阿のベンチに腰を掛けたぼくは水の入ったボトルを傾けつつ「別に、何かあった訳じゃないけどさ。体力はないよりあった方がいいでしょ」と口を尖らせた。
    ……何かあったというか、こう、諸々が積み重なった感じなんだよな。トランクを運ぶ手伝いをしようとしたらウィーズリーの双子に「いらない」と言われたり、クィレルに殴られて気絶したり、リドルに操られたジニーに首を締められて意識を飛ばしたり、リドルとの対決でボロボロになるまで痛めつけられたり、そんな諸々が積み重なった結果芽生えた感情ではある。それに自分の身は自分で守れた方がいいし。
    ぼくがそう言うと、アリスは少し不思議そうな顔で首を傾げた。
    「そりゃ体力はあるに越したことがないのは事実だが、でもお前、今のままでも自分の身くらい余裕で守れるだろ」
    「え?」
    「魔力。そんだけ辺りに漂わせといて、自覚がないとは言わせねぇ。正直言って、そんだけ魔力持ってりゃ無敵じゃね? 俺だって、お前と魔法ありの勝負じゃ絶対敵わねぇもん」
    「うーん……」
    そう言われればそうかもしれないんだけど、それでも現実問題、魔力以外の部分で負けがちなんだよな……物理攻撃に弱いというか。
    「魔力を薄ーく伸ばして全身に纏わせとくのは? 直で生身に攻撃喰らわないようにさぁ。もしくは魔力を索敵目的で周囲に漂わせて、間合いに入った敵を感知するとか。つまりは反応できない距離から攻撃されるとしんどいってことだろ」
    アリスが指折り数えながら提案してくる。こいつ物騒なことになるとポンポンアイディア出てくるな。ごく平凡な学生生活送ってる中、どうして死角から攻撃された場合の対応を考えなければならないんだろう? でも実際問題として、ぼくってば割と死角から攻撃されやすいんだから仕方ない。
    「まぁ、そうだなぁ……それがいいのかな。ちょっと集中力使うけど、何とかなるか」
    「マジ? 『ちょっと』で済むの、お前? 化け物ー……」
    何故か、ぼくに提案した側のアリスが引いていた。君が言い出したくせに梯子を外すのは止めてほしい。
    ……そう言えば、闇祓いは法執行部に所属する軍人でもあるのだった。幣原も身体を鍛えたのだろうか。……なんか似合わないけど……。
    少し休んで呼吸が整った。汗を拭いて「よし」と立ち上がると、アリスは「なんだ、まだやる気かよ」と苦笑する。
    「それはそれ、これはこれ。やっぱりいざって時に動けた方が都合がいいしね。それに……」
    「それに?」
    「鍛えてた方がモテそうじゃん。アクアはどういう人が好みかな? でも運動できない奴よりできる奴の方がなんかいいよね」
    「……そいつは知らんが、ま、頑張れよ」
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