少年に、日本式の「ドス」と呼ばれるその大小の刃物を与えたのはTigerだった。
「今日からこれをお前の得物にしろ」
使いこなせるようになったら、お前を俺の懐刀にしてやる。
少年は真剣な眼差しでそれを受け取った。
刃物も、言葉も。
十二と呼ばれた少年は、組織の中の同じ刃物使いに扱いを習いはじめ、やがて日本の映画などを見て真似をするようになった。あんなのは観客に見せるための外連で無駄な動きも多いし、敵がこちらの都合に合わせて待ってくれるようなこともない。
そんなことはさすがに十二も理解したようだが、それでも「座頭市の殺陣はスゴい」などと言いながら、やがて長ドスをも軽々と使いこなすようになった。
あれは集中力が高い。何か夢中になれるものを与えれば、薬に耽溺することはなくなる。
731