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    honeybee_3

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    トニシトの夏。香港の夏。

     昨夜、司徒寶は戻ってこなかった。店を閉めたあとオーナーに話があると引き留められて、待つと言ったトニーを先に帰らせた。TAXIを拾うから大丈夫だなんて言っていたが、きっと面倒になって店で寝ているのだろう。
     道場は暑い。夏は、日中はもちろん、できれば夜だって外で過ごしたいと思うほどだ。店ならクーラーがある。司徒寶が帰ってこないわけだと、トニーは汗だくで目覚めて、空の寝床を眺めて思う。
     起き上がり、服を脱ぐ。水で濡らしたタオルで体を拭い、顔は、頭ごと蛇口の下に突っ込んだ。
     阿正はもう起きていて、冷蔵庫で冷やしていたコーラをもう飲んでいた。
    「朝食の前はダメだと言われているだろう」
     たしなめると、阿正はニコッと笑った。
    「シト・ポウを迎えに行くから、朝食は1人で食べて」
     スクーターで店まで行く。まだ朝だというのに気温は30℃を超えている。湿度のせいで、かいた汗は乾くことなく肌を伝い落ちる。
     いつまでクーラーが付いていたのか、店の中は通気性の悪さが幸いして、外よりはまだ幾分涼しかった。その中で、司徒寶は客用のソファに寝そべっていた。長袖のシャツの胸のボタンは3つまで外され、そこから気だるい空気が滲んでいる。
     僅かに良からぬことを考え、ぶんぶんと頭を振る。
    「シト・ポウ」
     声をかけると乾いた唇が「水」と呟いた。
     トニーはグラスに氷を入れ、水を注ぐ。それから、ふといたずら心が湧いて、その氷を、司徒寶の胸の上にそっと乗せた。急な冷たさに驚いて司徒寶は飛び起きた。
    「冷たい」
    「目覚めたか?」
    「……うん」
    「どこかで朝飯食って帰ろう」
    「うん」
     司徒寶は頷きはしたが、ふらふらとトニーの肩に頭を乗せてきた。
    「シト・ポウ?」
    「……汗の匂い」
    「暑かったから」
     首を伝う汗を手で拭う。
    「まあ道場も暑いけど」
    「スイカでも買って帰ろう」
    「スイカかぁ」
    「阿正も待ってる」
    「うん」
    「スイカとコーラと、アイスも買おう」
    「アイス食いながら帰ろう」
     スクーターなら歩くよりはいくらかマシだ。背中の体温は熱いけど、たまにアイスが差し出される。一口食べて、上機嫌で鼻歌を歌う。司徒寶が背に身を預けながら、溶けたアイスで濡れた手を差し出すから、トニーはその指先をぺろりと舐めた。
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