被験体337番の記録 白い床、白い天井、白い服、たまにやってくる黒いマスクの大きなひとと、あとはみんな同じかお、かお、かお。
それがぼくの世界のすべてだった。
いつだったか、マスクをしていない大きなひとに出会ったけれど、そのひともぼくとおんなじかおだった。
ぼくらのかおはかわいいけれど、そのひとはぼくらよりシュっとしていて、すこしかっこよかった。さすがぼくのかお。
だからきっと他のマスクの人たちもみんなおんなじかおをしているのだと思った。この世界はおんなじかおの人しかいないのだと。すてきなかおだからしょうがないね。
だから今日、白いドアがウィーンと開き、マスクの人がつれてきた子のかおを見てぼくはさんかくの目がまんまるになるほどおどろいた。
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