ヨーグルト 寝ぐせがとれない夢を見た。
それは梳かしても梳かしてもなおらない、針金みたいなかたちだった。根元に水をつけても、ドライヤーをしても、髪の根元は爆発していた。はやく、はやくしなければ、学校に遅れてしまう。でもこんな髪型のまま学校になんていけない。
心臓が早鐘をうつ感覚で起きた。夢から覚めると、ああ今のは夢だったのだ、と気付くまでに数秒かかる。僕は眼前に広がる雨彦さんの背中に、鼻をこすりつけた。
「起きたかい」
「あ、ごめん、起こしちゃったー?」
「そうだな、もうひと眠り」
雨彦さんは寝返りをうって、僕を抱きしめ直す。今度は胸に鼻をこすりつけた。雨彦さんの匂い。朝のベッドの中では、鬢付け油の匂いはしない。
2030