よもすがらのあいだがら 一人残らず地獄に真っ逆さまに堕ちていくんだ。
否定したってよかったが、同意の気持ちのほうが優ったので頷いていた。それを見て一番不快そうな顔をしていたのは、地獄行きを嘲笑われた他人ではなく発言した本人だった。
シーツに零れ落ちる髪は結ばれておらず、赤い川になって流れていく。束にして掬いとれば濃い赤色になるし、生白い掌に均等に乗せてやれば明るい陽の光に見えた。しかし部屋は夜の底。明かりはなく、月の光と街灯の灯りだけを頼りにすると、赤色は黒に近くなる。太陽の光であるならば髪を透かしたりしようものだが、月の光は外側から赤色を塗り込めるばかりで、男が好きな色にはならなかった。結局普段のような房にして、指に絡めては解く遊びを繰り返している。梳くほどに艶を増す髪は、柔らかく従順な生き物のようで好ましい。
1933