忍術学園の門の前。生徒の身内かはたまた学園関係者の知り合いか、見慣れない中年の男性から出門票を受け取り、笑顔で見送る小松田の姿が遠目から見えた。
少し警戒をして見ていたが、男は利吉の射抜くような鋭い視線にも気付かず背を向けると、振り返る事なく利吉とは反対の方向へと歩いていく。
何事もなく相手が帰った事にほっと胸を撫で下ろすと同時に、自分の度量の狭さに重い息をついた。
「あ、利吉さぁん!三日ぶりですね!」
学園内に戻ろうと振り返った小松田がこちらに気付き、大声で手を振りながら利吉の名を呼んでくる。以前ならば「大声で私の名前を呼ぶな!」と叱咤していただろうが、嬉しそうにぶんぶんと音が鳴りそうなほど大きく振る手を見ると、「犬じゃないんだから」などと言いながら、口端が勝手に上がってしまう自分はかなり小松田に毒されていると思う。
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