小さい頃から何をやっても失敗ばかりで、お店の仕事を手伝うつもりが、よけいな仕事を増やして周りを困らせてしまうことなどしょっちゅうだった。
「秀作坊ちゃんは、ただ笑ってくれてるだけでいいんですよ」
落ち込む幼い自分に、お手伝いの人が掛けてくれた言葉。失敗してもやってしまったと笑っていれば、みんなしょうがないなと笑い返してくれる。それが嬉しくてまた笑って、怒られて泣いたり落ち込んだりすることもたまにあるけれど、笑うことは自然と小松田の一部となっていた。
そんな自分が成長してもへっぽこはやはりへっぽこのままで、何をやっても中途半端で終わってしまう。
町の忍者塾では中身のたっぷり入った墨池をひっくり返してしまい、慌てて立ち上がった拍子に隣の席の子にぶつかり、その子もまた墨を磨っていた硯をひっくり返し、その隣の子が机上から溢れる墨を避けようとした足を絡ませて後ろの席へと転けてと、室内にいた生徒全員を巻き込む不運な事故の連鎖が起こった事がある。
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