流れ星をいま 舗装の剥げた車道を、一台の黄色い車がガタガタとその丸みを帯びた車体を揺らしながら走っていた。真っすぐに続く道は大きな真夏の太陽がじりじりとアスファルトを焦がし、溶けたコンクリートの匂いが漂ってくるような錯覚さえ覚える。
「ロー、もうすぐだぞ」
父親の声にうん、とおざなりに応える。サンデードライバーの父が愛するこの車は、車検を毎回どうにかこうにか通過している超ご高齢のビートルである。もはや毎年の自動車税で一台立派な車が買えるのではないかしらん、と思わないでもないが、子供の頃映画でこの車を見てからずっと憧れ続け、ようやく初任給で購入したこれを週末になるといそいそと洗車し悦に浸る父親を見れば何も言えない、と母はすこしも困ったようではない声で笑っていた。
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