あの香り夢見の悪い夜が続いていた。連日の茹だるような暑さと秋のシーズンに向けた学園全体に広がる水面下の緊張感に気疲れしているのか、正体不明の不快感で目が覚めてしまう。時計を見ると午前3時すぎを指していた。朝練のために早寝したとはいえ、さすがに早起きすぎる。
私のはじめての担当であるドリームジャーニーが旅の果てを求めて学園を出てからもうすぐ1年と半年くらい。ジュニア期でのG1制覇に加え春秋グランプリ制覇という新人には大きすぎるタイトル、もとい傷跡を残して行ったジャーニーはこのトレーナー室にいない。
彼女の旅路を応援する、トレーナーとして大人として当然だった。しかし、彼女が私に残して行ったものは輝かしい成績だけではなかった。初めての担当、トゥインクルシリーズを一緒に駆け抜けたトレーナーそんな特別な関係の内に秘められた自分の感情に気がついたのは2人で行った温泉旅行の時だ。
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