トリジェとポッキーあぁ、今年もまたくだらない日が来たのか。
儀式場に転送され、焚き火場では手ぶらだった手のひらの中に四角い箱を握らされているのに気がついてため息を吐いた。
エンティティのお戯れだ。
箱には「支給された菓子を殺人鬼と同時に食べる」と指示が貼り付けてあった。あぁ、どうしてこの時空を作っている邪神はこうもお祭り事が好きなんだろう。当たりを見渡すと手ぶらの仲間たちが同情の眼差しを俺に寄越していて、今回のお遊びの標的が俺だけだと知って蹲りたくなった。
丁度よくドクンドクンと心臓が高鳴りだし、殺人鬼が近づいてきているを感じる。俺はもう一度溜め息を吐いて、わざと音を立ててロッカーの中に飛び込んだ。
「見つけた」
バンッと勢いよく扉が開いて、楽しげに歪んでギラつく黄金色の瞳が、逆光の中俺を見下ろした。よりにもよってトリックスターか、頼みづらいな。ゲラゲラと笑いながら俺を嘲る様子が容易に想像出来てげんなりする。けれどもわざと見つかった以上ここで諦めては仲間に迷惑がかかるだけだ。俺は意を決して、トリックスターの眼前に菓子の箱を突きつけた。
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