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    7330tyome

    @7330tyome

    ちめたろうでちょめたろう。
    成人済み雑食リョナラー腐女子。

    《ジャンル》
    ・自創作
    ・うちよそ
    が多め、たまに版権です。

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    7330tyome

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    自探索者の空助と仙麻の祓い屋の二人のとある日の会話です。

    『祓い屋達のランチタイム』夏のチャイナタウンは、湿気と喧騒が絡み合い、まるで巨大な生き物の腹の中のようだった。チャイナタウンの入口に立つ中華料理屋は、赤と金の派手な看板と、油とスパイスの香りが漂う店構えで、治安の悪いで有名なチャイナタウンの怪しげな空気に馴染みながら見物客を招くように建っていた。面屋敷空助は、額に滲む汗をハンカチで拭いながら、店の前に立ち尽くす。
    約束の時間まであと数分、空助はポケットからエナジーゼリーを取り出し、一気に飲み干して過労で重い身体に無理やり活を入れる。

    名門祓い屋・面屋敷家の次期当主である空助は、小柄な見た目に反して優秀な祓い屋だ。日本中を飛び回り、幽霊や妖怪を祓う日々だが、最近は愛する式神のぬいぐるみが三体全て盗まれ、フリマアプリで転売されていることが原因で特に限界が近い。
    即落札されるぬいぐるみ達を買い戻せず、仕事の依頼は容赦なく増える。御札とエナジーゼリーが手放せない生活の中、空助の心は負の感情で揺れ動き、普段の礼儀正しい態度も綻びつつあった。

    「空助きゅ〜〜ん♡」

    突然、背後から甘ったるい声が響き、柔らかい腕が空助に絡みついてきた。咄嗟に背筋が凍る。
    「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!やめるがね!離れるがね!」
    空助は叫び、抱きついてきた桃園仙麻を力ずくで剥がす。
    仙麻は露出度の高い白いチャイナ服をまとい、桃柄の布地とビニールが縫い合わさった透明な上着を羽織っており、夏の暑さに合わせてか、チャイナ服のスリットは深く、胸元を大胆に開いたデザインが、チャイナタウンの派手な空気と調和していた。
    桃色の髪を揺らし、仙麻はニヤリと笑う。

    「うわっ、空助きゅん冷たいッスね! 俺サン、待ちきれなくて飛んできただけなのに〜!」仙麻は大げさに胸を押さえ、猫撫で声で続ける。「ねえ〜〜いい加減空助きゅんの子供の頃の写真くれないッスか〜〜? 絶対ちっちゃくて可愛いッスって!」

    「黙るがね! 仕事の話しかしないと決めたはずだろ!」空助は顔を真っ赤にして一喝し、ぶつくさ言いながら中華料理屋の引き戸をガラリと開けた。夏の熱気が店内に流れ込むのを防ぐように、素早く仙麻に「仕事はきっちりするがね。さっさと入れ」と即した。

    「はーい、お客サン2名入りま〜す♪」
    仙麻は軽い調子で答え、ひょいひょいと空助の後ろをついて店内へ入る。店内は赤い提灯と龍の装飾が目を引き、油で揚げる音と香辛料の香りが充満していた。チャイナタウンの喧騒が遠くに聞こえる中、店員の威勢のいい声と客の笑い声が響き合う。仙麻は店員に目配せすると店員は「こちらへどうぞ〜」と奥の個室に案内する。空助は円卓に腰を下ろし、鞄から御札の束を取り出し枚数に不備がないか最終確認をし始める。仙麻は対面に座り、透明な上着の裾を揺らしながらテーブルに頬杖をつき、空助を愛おしそうにじーっと見つめていた。

    店員が注文を取りに来ると、空助は「アイスコーヒー、ブラックで」とそっけなく告げ、仙麻はメニューをチラリと見て、「タピオカミルクティー、ミルク多めでよろしくッスね! 氷もたっぷりで!」とウインク付きで注文する。店員が去ると、仙麻はテーブルに身を乗り出し、空助の顔を覗き込む。

    「ほんと、空助きゅんって真面目ッスよね〜。そこがめっちゃ可愛いんッスけどね!」仙麻はニヤリと笑い、続ける。「でも俺サン〜心配なんスよ〜?痩せてる空助きゅんも可愛いッスけど、俺サンはいっぱい食べる空助きゅんも見たいッス。」そう言って、戻ってきた店員に手を挙げ、「店員サン追加で料理お願いッス! この子、過労でガリガリなのよ、栄養つけさせたいの!」と勝手に注文を始めた。

    空助は目を丸くし、「余計なことするな! 食べてる暇なんかないがね!」と抗議したが、仙麻は「いいからいいから!俺サンが奢るなんてそうそうないんだから甘えとけばいいんッスよ」と手を振って押し切る。メニュー表を手に、仙麻は楽しげに注文を並べ立てた。

    「じゃあ、まずは麻婆豆腐、辛さ控えめで! 豆腐は絹ごしで、口に入れると滑らかに溶けるやつ。刻んだネギがたっぷり乗って、香りがふわっと立つやつね! 次、チャーシュー丼!チャーシューは厚切りで頼むッスよ!この店の看板メニューなんスけど脂身がトロッと溶けて、噛むと甘辛いタレがジュワッと染み出すんス。あ、あと小籠包、3人前! これも美味いんスよ!皮は薄くて弾力あって、箸で持ち上げるとスープの重みでプルンって揺れるの。噛んだ瞬間、熱々の豚肉と生姜のスープが口いっぱいに広がるんス!」

    店員がメモを取り終えると、仙麻は満足げに頷き、空助にウィンクする。
    「これで空助きゅん、ちょっと元気出るでしょ?」

    「…誰がそんな量食うんだよ、 守銭奴のくせに無駄遣いするな」
    空助は悪態をつきながら御札を整えて封筒に入れ直すと「…ん、問題ないがね」と仙麻の顔を見た。仙麻は「ごめんごめん! 俺サン、可愛い子は目一杯甘やかしたくなるんスよ! ほら、空助きゅん男の子じゃん?男の子ってだけでテンション上がるタイプなのよ〜。」と誤魔化しつつ、鞄から札束を取り出して机に置く。

    「ほい、支払い。これでいいッスかね?」

    空助は札束を一瞥し、金額を確認して頷く。「問題ない。仕事はきっちりやるがね。」
    空助は御札の束を仙麻に渡し、札束をしまう。

    「特注の封印札だ。怨霊クラスの怪異にも対応できる。面屋敷家謹製、品質は保証するがね。」

    仙麻は御札を手に取り、目を細めて眺める。「うっわ、さっすが名門! この霊力の込め方、完璧ッスね! 俺サンのコレクションに仲間入り決定!」仙麻は御札を愛おしそうに撫で、透明な上着の隠しポケットにしまう。チャイナ服のスリットから覗く足を組み直し、仙麻はタピオカミルクティーをストローでちゅーっと吸い上げた。

    「そういえば、空助きゅんのぬいぐるみ、フリマアプリで見た気がするんだけど…情報いる?」仙麻の言葉に、空助の動きがピタリと止まった。
    「…どこだ? いつ出品されてた?」声が低く、切迫している。夏の暑さも忘れるほど、空助の目は真剣だった。仙麻はニヤリと笑い、指を二本立てる。

    「情報料、別料金ッスかね。ほら、俺サン、払えばなんでもやるタイプなのよ。」

    空助は拳を握り、唇を噛んだ。負の感情が胸で渦巻く。だが、深呼吸して冷静さを取り戻し「…いくらだ? 言ってみろ。」と睨んだ。

    仙麻は目を細め、まるで狐のように笑った。
    「空助きゅんの子供の頃の写真一枚でどうッスかね?」

    「死ね!」空助の叫びが店内に響き、ちょうど運ばれてきた料理のトレイを持った店員がビクッと震えた。
    熱々の皿からは、四川山椒と唐辛子の刺激的な香りが立ち上り、ふるふるの絹ごし豆腐が赤い油の中で揺れる。刻んだネギの鮮やかな緑が彩りを添え、挽き肉の香ばしい匂いが空助の鼻をくすぐった。チャーシュー丼は、厚切りのチャーシューがご飯の上にどっしりと鎮座し、甘辛いタレが米粒に染み込んで脂身が光を反射する。小籠包は蒸籠の中で湯気を上げ、薄い皮から透けるスープがプルンと揺れ、一口噛めば豚肉と生姜の濃厚な旨味が口いっぱいに広がりそうな誘惑を放っていた。

    空助は目の前の料理を睨み、続けて仙麻を睨み、そして深い溜息をついた。「…食べたらちゃんと話せよ。兄ちゃ……ぬいぐるみ達のこと、絶対に。」

    仙麻は「約束ッスよ空助きゅん!」と笑い、タピオカミルクティーをもう一口吸い上げた。


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