両手に掬った恋心 休憩室でココアを一杯。右手に持った紙コップに口をつけながら、左手は携帯端末の液晶の上を滑らせる。新着のメッセージ件数は、この短時間では開いても開いても減らない。「彼女」たちとの関係を絶ったところで、DJとしてのフェイスの交友関係が狭まったわけではない。急ぎでないものの返信は基本的に後回しにせざるを得ない量だった。
メールは一旦置いておいて、気になったのはSNSの通知である。フェイスは何気なく――とは言い切れないほどしっかりした予感を抱えつつ、数字の重なるアイコンをタップした。
新しい投稿に目を通して最初に出てきたものは鼻から抜けるような溜息だったが、それは呆れなどの負の感情が原因ではなくむしろその逆で、画面を見てひとり和んでしまったことに対する、誰にとも言えない弁解に近かった。
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