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    wooyouwoo1_1

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    wooyouwoo1_1

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    vcrネタ
    映像とは全くの別物です。
    書きたいところだけ並べたので、繋がっているように見えて繋がってません。(整理するのがめんどくくさかった)◾️ごとに別の話です

    気が向いたら良い感じにまとめたい

    ◾️迷い子

    どれだけ歩いただろう。
    深い森の中で月明かりさえ遮られ、ただ湿った土の匂いと葉擦れの音だけが私を包んでいた。

    夜霧が濃くなるにつれ道は消え、私は彷徨うしかなく、追い立てられるように歩き続け、気がつけば目の前に闇の中から浮かび上がるような館が現れていた。
    背を向ければ、もう来た道は見えない。
    ただ、その館だけが、満月とともに夜の底で灯をともして待っている。

    重厚な扉に手を伸ばそうとした瞬間、ふと気配を感じた。
    扉が静かに開き、そこに立っていたのは一人の男だった。

    「……迷ったんだね」

    柔らかい声。
    彼は穏やかな笑みを浮かべ、ためらいもなく私に手を差し伸べた。
    その仕草はあまりにも自然で、

    「ここは、夜を過ごすには悪くない場所だ」

    そう言って、私の手を取る。

    この手に触れてしまったことで、もう私は引き返せない道を踏み出していた。

    ◾️招かれざる客

    館に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
    静謐で、どこか張り詰めている。だが埃ひとつなく整えられた調度品は威圧感よりも優雅さを湛えていた。

    広間に導かれると、そこにはすでに三人の男がいた。
    最初に目を引いたのは、長い指で古びた銃を弄ぶ男――テン。
    唇の端を上げ、私を値踏みするように見つめる。

    「おや、珍しい客じゃないか」
    彼が弄ぶたび、シャンデリアから跳ね返る冷たい光が銃口をなぞり、私の視線を捕える。

    「怖い?」
    その問いに答える前に、クンが低い声で制した。
    「テン」
    彼がただ名前を呼んだだけで、テンは肩を竦め、あっさりと銃をジャケットに仕舞った。

    次に現れたのは、彫刻のように整った顔をした男だった。テンが彼をヘンドリーと呼んでいる。彼が剣幕な顔で詰め寄り、私の手をぐっと引っ張る。
    「……誰が招いた?」
    彫りの深い彼の瞳はどこか鋭く、警戒を隠さなかった。
    「いいじゃないか。美しい客人だよ」
    とテンが笑えば、ヘンドリーは眉をひそめたままフン、と手を離した。

    壁際に立っているのが、ヤンヤン。彼はひと言も発さず、ただじっとこちらを見ていた。同じく警戒されているのか、ただのひとつも興味がないのか、全く読めなかった。

    そして最後に現れたシャオジュンが、記録帳を片手に言った。
    「また……来たのか」
    彼だけは私を見つめながら、どこか別の意味を含んだように呟いた。また、というのは以前にもこの森に迷い込んだ者がいたのだろうか。四人が私を見る目は、正に"招かれざる客"のようだった。

    ◾️晩餐会

    その夜、私は館の主――クンに晩餐に招かれた。
    長いテーブルの上に豪華な料理が並ぶ。しかし不思議と、誰も食べようとはしない。

    「食べないの?」と問えば、クンが笑った。
    「君が口にすれば、皆も食べるさ」
    私が口に運ぶまで、視線はこちらを向いていて、自分は食卓の真ん中に置かれた供物のような気分になる。

    その中でも、ヘンドリーの目だけはとりわけ強く私を見ていた。やがて彼は立ち上がり、ヤンヤンと席を替わると、さらに私の近くに腰を下ろした。
    「……やはり、君はただの客人じゃない。なぜクンが君を招き入れたのか、すこしばかり興味が沸いてきた」
    そう低く囁く声が耳に触れた。

    席を変わったヤンヤンはというと、終始無表情のまま、グラスに黒い液体を注ぎ込み、口に含んでいた。
    「それ……」と私が呟くように尋ねると、彼は静かに微笑む。
    「毒。美味しいんだ」
    その言葉に、誰も驚いた様子を見せなかった。

    テンは片肘をつき、私に退屈そうな視線を投げかける。
    「で? 君はここで何を求めてる?」
    「……」
    答えられずにいると、クンが口を挟む。
    「無理に話すことはない。いずれわかるさ」

    その言葉が、救いであると同時に、逃げ場を奪う宣告のようにも思えた。
    私はこの館に、或いは彼らに、何を求めて来たのだろう。
    そもそも、何かを求めなければ、この館には呼ばれないのだろうか。思考は堂々巡りするばかりで、食事の味はもう分からなかった。

    ◾️秘密の断片

    晩餐が終わり、長い廊下を歩いていた。
    燭台の炎が壁に揺れ、影が踊る。
    けれども静寂は、むしろ心臓の鼓動を際立たせる。

    ――ふと、開いた扉の隙間から蒸気が洩れていた。

    思わず目を寄せる。
    そこには淡く光る浴槽があった。
    満たされているのは透き通る液体……だが月光を溶かしたようにかすかな緑色を帯び、まるで翡翠の泉のようにきらめいている。

    その中に、服を着たまま沈んでいるのはヤンヤン。
    彼の銀髪が水面に広がり、彼の顔は夢を見るように静かだった。
    その姿はあまりに美しく、毒の中にいると分かっていながら、目を離すことができない。

    「……見ているのか」

    瞼がゆるやかに開き、光のない眼差しが真っ直ぐにこちらを射抜いた。
    甘美な美しさと、ぞっとする冷たさに胸が締め付けられる。
    私は咄嗟にその場を離れた。

    別の部屋では、ヘンドリーが大理石の彫刻に触れ、今にも口づけようとしていた。
    その陶酔の表情に、ぞっとしながらも目を逸らせない。
    だが次の瞬間、彼の鋭い眼差しがこちらを捉えた。
    「……おい、そこで見ているんだろ」
    私は慌てて廊下を駆け出した。背後から足音が追いかけてくる――しかし角を曲がった時には、もう気配は消えていた。

    心臓の鼓動が落ち着かぬまま、広間へと戻ると、テンがいた。

    ◾️記録

    再び廊下を彷徨っていると、一冊の手記が床に落ちていた。
    拾い上げてめくると、奇妙な記録が延々と綴られていた。

    「私は永遠の生を生きている…?」

    私は続けて読むことにした。

    "私は永遠の生を生きている。
    果てなく繰り返される昼と夜の狭間に囚われて。"

    "それは悪の貌なのか、あるいは慈悲の貌なのか"

    "ならば、彼女もこの永遠を、私と共に生きられるだろうか"



    「……それを見たのか」
    振り返ると、シャオジュンが立っていた。
    彼は小さく笑みを歪め、ため息をついた。

    「もう気づいているだろ、ここがただの洋館ではないことに。
    時間も死も、この中では意味を持たない。恐ろしいだろう?だが同時に、美しくもある。少なくとも、僕は。」

    そこで声を潜め、誰にも聞こえぬように言う。

    「もし君が本当に帰りたいと思うなら、夜明け前に扉を探すんだ。誰にも見つからずに」

    瞳には確かな人間らしい色が宿っていた。
    けれどその言葉が、救いなのか、それとも新たな迷宮への誘いなのか――私にはまだ、分からなかった。

    「それから……君はまだ選ばなくていい」
    振り向かず、彼が小さく言った。
    「けれど、迷えば迷うほど、館は君を手放さなくなる。僕もそうだった」

     この館に招かれてから、時の流れがわからない。外は闇のままなのに、部屋に置かれた時計は朝を告げている。カチリ、カチリと音だけが響き、心臓の鼓動と重なって不安をあおる。

     ――扉を探せば、外へ出られるのか。
     その問いが、胸に重石のように沈んでいる。

    ◾️私とワルツを

     今の私には、もう私には立ち止まってゆっくり考えることはできない。

     昼の華やかさが嘘のように、館はひどく深い静寂に沈んでいた。絨毯の上を踏みしめるたび、わたしの鼓動だけがひどく大きく響く気がする。
     振り返っても、誰の気配もない。なのに、誰かに見られているような感覚は拭えなかった。

     風に揺れるカーテンの隙間から、夜気が差し込んでいた。近づくと、そこは広々としたバルコニーへとつながっていた。月明かりに銀色を帯びた庭園が眼下に広がり、星空と溶け合っている。館の閉ざされた空気とは別の、ひやりと澄んだ空気がそこにはあった。

     その中央に、すでに誰かがいた。
     ヘンドリーだった。背の高い影が欄干に寄りかかり、白いシャツの袖を風に揺らしている。
     彼は振り返ると、思いのほか穏やかな笑みを見せた。

    「こんなところじゃ眠れない?」

    「…」

     彼は小さくうなずいた。そして躊躇なく一歩近づいてきた。月光の下で見上げたその瞳は、どこか無邪気な子どものようで、けれど底に何か、深いものが沈んでいる気がした。

    「ここに立つとね、時々思うんだ。下へ飛び降りて、そのまま夜に溶け込んでしまいたいって」
    そう言いながら、彼は掌を差し出した。

    「踊ってみない?」

     唐突すぎる誘いに、息が詰まった。だが、彼の眼差しからは冗談の色が消えていた。わたしが応じるしかないことを、彼は知っているようだった。
     そっと手を重ねる。次の瞬間、わたしの腰に彼の手が添えられ、もう一方の手が軽やかに導く。音楽などどこにもないのに、彼の動きがそれを補うかのようだった。

     夜風がドレスの裾を撫で、月が揺れる庭園の影が足元に伸びる。
     ステップは不思議なほど滑らかで、まるで見えない旋律に合わせているかのよう。彼の足運びに従っているうち、わたしの中の緊張は少しずつ薄れ、代わりに陶酔が広がっていった。

    「いいね……君となら、永遠に踊っていられる」

     囁きに、心臓が跳ねる。
     永遠。
     その言葉が、なぜかひどく重く、怖ろしいものに響いた。

    「やめて……永遠なんて、そんなの私には――」

     思わず口をついて出た声は震えていた。けれどヘンドリーは笑ったまま首を振る。

    「分かってる。君はまだ拒むだろう。でも……いつか分かるよ。次は君から誘って」

     最後のターンで彼の腕から放たれ、わたしはバルコニーの端に立たされていた。月光が白く頬を照らし、背後には夜の闇。
     彼は深く一礼すると、そのまま廊下へと戻っていった。残されたわたしはまだ熱を帯びた手を抱きしめ、息を詰めていた。

     美しい。けれど、恐ろしい。
     その感覚が胸の奥で渦を巻き、わたしは長い間そこから動けなかった。

    ◾️ 永遠に咲き続ける花

     夜の庭園は、昼間とはまるで別世界だった。
     月明かりを浴びて花々は白く浮かび上がり、風が吹くたびに甘やかな香りが波のように広がる。ここが館に囚われた空間だということを忘れそうになるほど、静謐で美しい。

     ひとりで歩いていると思ったのに、すでにそこに立っていた人影に気づく。
     噴水の縁に腰をかけ、夜気を纏うように佇むクンだった。

    「隠れなくてもいいよ」

     振り返った彼の声は低く、よく通る。責めるようでもあり、慰めるようでもある。
     わたしは咄嗟に言葉を失ったが、視線だけで返した。

     クンは立ち上がり、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。
     その一歩ごとに、庭園の空気が変わっていく。まるで彼自身がこの場所の律動を支配しているかのように。

    「この花、」

     そう言って、彼は一輪の薔薇を摘んだ。花弁は赤く濡れたように艶めき、手の中で滴るように揺れている。
     彼は花を差し出した。

    「触れてみるといい。……この花は、決して枯れない」

     指先を伸ばすと、確かに花弁は生き生きと柔らかかった。けれど、永遠に咲き続けるという言葉が脳裏に重く響く。

    「ヤンヤンの毒だ。あの子が育てる花は、時を拒む。人間の時間も、同じように」

     さらりと告げる口調に、ぞっとする。
     クンの瞳はわたしを真っ直ぐに見据え、逸らすことを許さない。

    「君も感じているだろう。ここは常軌を逸した場所だ。けれど――」

     彼は摘んだ薔薇をわたしの胸元にそっと差し出す。
     その仕草は優雅なのに、逆らえない強制力があった。

    「恐れることはない。恐怖も、時間も、すべて僕が統べる」

     低い声が心臓に響き、体温が奪われていくようだった。
     支配。まさに彼の言葉どおりだった。

    「……でも、あなたたちはどうしてここに?」

     勇気を振り絞って問うと、クンは一瞬だけ笑った。美しいのに、どこか哀しげに。

    「理由を知りたい? それは“扉”を開けてからだ」

     わたしの胸に刺さった薔薇の棘が、わずかに肌を掠めた。
     痛みと共に、ひやりとした冷たさが流れ込む。
     この館の秘密が、わたしを絡め取っていく。

     クンは薔薇から手を離し、着いてこいと言っているように、背を向けて歩き出した。

    ◾️扉

    夜の館は、ひどく静かだった。
    どこかで時計が時を刻む音さえ、深い水底に沈んでいくように遠い。
    私は扉の前に立っていた。これまで何度も試したけれど、そのたびに迷路のように館へと戻されてきた扉。
    それでも――今夜は違う気がした。

    冷たい取っ手に手をかける。心臓が痛いほど打ち、呼吸が浅くなる。
    ――開ければ、外へ。

    ぎい、と蝶番が鳴いた。
    扉が開いた。
    そこに広がっていたのは、あまりに美しい外の世界だった。

    陽光が石畳を照らし、白壁の街並みは輝いている。
    空は澄み渡り、風は清らかで、まるで夢に見た楽園のよう。

    けれど、その光景は私の目には薄っぺらで、色褪せて見えた。
    明るすぎる光は、私を拒むように冷たく、
    どこにも私の居場所などないと告げている。

    背後から、静かな声が落ちてきた。
    「行くんだね」

    振り返れば、彼らが静かに私を待っていた。
    その瞳の奥には、永遠の夜と、終わりのない美が燃えている。
    闇の中に立つ彼らは、外の光よりも深く、美しかった。

    私は唇を震わせ、やっと声を出す。
    「あなたたちは恐ろしくて、狂っていて……それでも、誰よりも美しい」

    私は理解した。
    この不穏な館こそ、楽園なのだと。
    彼らが、私が選んだ光なのだと。

    私は扉に手をかける。
    外の世界を背にして、静かに、それを閉じた。

    最初から、私に逃げ場などなかったのだ。
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