どひふの夏休み【三週目】
擬似行為を終えて一二三が帰って行ったあの日、観音坂家ではちょっとした事が起こっていた。
一二三が脱いだパンツを独歩の部屋に忘れていたのだ。
独歩は寝る前に、交わりの痕跡が生々しく残る青臭く湿ったそれを部屋の隅で発見した。(自分のパンツはお風呂に入った時に洗ってある)慌てて隠そうとしたが、体液の着いた物をそのままにしていいわけがない。冷静に考えれば、明日家族たちが出掛けて一人になった時に洗えばよかったのだが、独歩はそこまで考えが至らない程度には焦っていた。高校生なんて、行動が親から指摘される可能性が大いにあるのだから一刻も早く秘密の出来事の証拠を隠滅しなければ、と思ったのだ。
時刻は深夜十一時。親は、まだひとり寝のできない七歳の弟の寝かしつけで一緒に寝てしまうのがほとんどだ。家はシンとしているので大丈夫だろうと踏んで、独歩は洗面所へゆっくり駆け込んだ。ここで洗って部屋で乾かしておけば明日には乾くだろう。
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