【飴色】 カフェオレ 食に拘りがあるわけではないけれど、コーヒーぐらいはおいしく、と言うよりは、よい香りで弱い朝の目覚めもマシになると買ったものの、私にはハードルが高過ぎた。ぼうっとしている間に時間は過ぎ、結局ばたばたと慌ただしい朝のひと時だ。まあ、何となく、三日坊主で終わるだろうと、察しが付かなかったわけでもない。ただ、その後が、想定外だった。
「傑、そろそろ起きろよ。遅刻する」
昇ったばかりの弱い朝日を瞼に感じつつ、悟の張りのある声を夢現に聞いている内に、ぬくぬくとした極楽から、冷気に体を包まれた。掛布団を剥がされたらしい。
「さむぅ」
「傑、朝」
「ん」
「起きろよ、ねぼすけ」
「ぅん」
生返事をしながら寒さゆえにもぞりと動くと、再度、起きろよと言い置いて賑やかな気配が遠ざかる。かわりに微かに豆を挽く音に続いて、香ばしい香りが漂ってくる。
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