「なぁ、そこの兄ちゃん!芸能活動とか興味ねェか!?」
「は?」
街を歩いていたら、黄色いコートを着込んだ男から声をかけられた。
「…すみませんが、急いでますので」
「まぁまぁ、話だけでも聞いてくれって!」
顔も合わせずに立ち去ろうとしたが、男はなおも諦めずに食らいついてくる。
そのしつこさに思わず嫌悪感丸出しの顔で舌打ちしてしまう。
こっちはこんなくだらないことに時間を割いてる暇は無いのだ。早く家に帰って一番乗りで手に入れた宝──クリック君のファースト写真集(ソロ)──の開封の儀をしなければいけないというのに。
「あのですね、いい加減に……」
「あ、忘れてた。俺、こーゆー者なんだけどよ」
思い出したように両手で差し出された名刺。そこに書かれてある社名を見て、目を剥いた。
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