あのこになりたい 棗巳波は大いに不満を抱いていた。この自分の隣にいる男、もといメンバーの狗丸トウマに対してだ。そんな巳波の不満などつゆ知らずにトウマは自分の家のソファーに座って巳波の隣ですっかりリラックスした様子で映画を観ている。自分で観たいと言い出したくせにあくびを噛み殺している。不満の原因はトウマの今の態度が出会った頃の自分に対する態度が違うことだ。
「狗丸さん、わたしのこと好きですか?」
出会った頃と態度が違ってしまっているのは当然だ。なぜなら、かつてのトウマは巳波を誤解していたからだ。巳波はトウマに心配されるような真面目で悪影響を受けるような人間ではない。優しくておっとりしている理想のミナなど本当はいないのだから。
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