プラスチックでできた黒いハートをめくって裏向ける。その動作を繰り返すこと三回。三つの黒いハートは白に染まった。
「次」
顎をしゃくるとタイガは再びピンク色の椅子の背を抱いて思案顔で盤面を見つめた。緑の盤面は白と黒のハートで埋まりつつある。数はやや黒が多いだろうか。ドラチは二人の邪魔をしないように高度あげるといち、に、さん、とその数を数え始めた。バックヤードに置いてあったオセロ盤はブランドらしいアレンジが加えられていて、通常なら丸い黒白の石はハートの形をしていた。どうやら過去に販売された商品らしい。
ドラチの声が聞こえているのかいないのかアレクサンダーの指が小さなハートを摘まむ。浅黒い指の先、短く切り揃えられた爪がハートを緑の一マスに置いてさっきのようにだが今度は四回裏返す。
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