色仕掛花手折「興が乗った。貴君、珍しい夢を見てみたいとは思わないかい?」
リィンの私室に呼び出され、二人で酒盛りをしていたことは覚えている。アンジェリーナがアカユラの奥地から珍しい酒を持ってきた、とリィンはいつにもましてご機嫌だった。盃を何度も空にしては手酌も構わずに再び満たし、詞を吟じたかと思えば心の赴くままに舞い踊る。仙境にありて夢でも見ているようだった。しかし宴もたけなわ、そろそろ切り上げようかとドクターが立ち上がったときに、リィンはその袖を引き、そう言った。
珍しい夢とはなんだろうか。いわゆる明晰夢のことか。勿論興味はある、と答えたのが、ドクターにとって運の尽きだった。
「蝶の夢は所詮蝶なり。ならば貴君よ、君は夢の中でも、目を覚ましていられるのかな?」
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