海の名 大学生になった最初の夏休み、さて何をするかと思っていたところに、玲央先輩から「海行こうぜ、海」と誘われた。海なんて久しく行ってない、夏は毎年バスケの強化合宿があった程度で、レジャーというものにすっかり縁遠くなっている。
「つか今から行こうぜ」
「い、今から!? 水着とか何もないっすけど」
「いーだろべつに。すぐ乾くし」
そういう問題じゃ……と思ったけれど、先輩は立ち上がって「それじゃあ行くぞ」と準備し始めてしまったから、俺は慌てて日焼け止めを探す。昔は美容用品だと思って敬遠していたけれど、今はもう塗らないと火傷レベルで焼けてしまう。近頃の太陽は異常だ。
鎌倉くらいならすぐ行けるだろう、と湘南新宿ラインに飛び乗った。先輩、また少し背が伸びた気がする。俺も追いつきたいとは思うが、彼を越す未来はなかなか想像できなかった。
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