ピピピピ……ピピピピ……。
軽やかな電子音に、ゴソゴソとベッドから手を伸ばす。
「 ……んー…… 」
寝ぼけまなこを時計の文字盤に向けると、午前七時。
「 バイヤー!寝過ごした!仕事…… 」
ガバッと飛び起きると、それを制止するようにぐいと抱き寄せられた。
そのまま、すっかり逞しくなった腕にがっつりと抱え込まれる。
「 今日はオフだろ。……まだ寝てろ」
間近で囁く声に、どきりとしながら。
カレンダーに視線を動かした。
「 ……そだっけ?」
「 あ"ぁ」
視界を掠めたカレンダーには、赤いはなまるが付いていて。
オフ!と蛍光グリーンの浮かれたフォントで走り書いてある。
「 ……んー……じゃあもうちょっと寝ようかな」
そうつぶやくと、抱きしめる腕に力がこもった。……あったかい。
伝わる温度に、だんだん瞼が重くなって。
ふわふわとした微睡みに、意識が溶けていく。
起きたら、今日は俺がコーヒーを淹れてあげるね。
そしたらガーリックトーストとスクランブルエッグで朝食を済ませて。
ふたりで出かけるか、一緒にのんびり過ごそう?
そう口に出したわけではないけれど。
応えるように、ささくれだらけの大きな手があたまをなでた。