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    だいだ

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    霊律お題「バレンタイン」

    この告白は成功する2/14バレンタイン、影山律は学校が終わると一度家に帰り、あらかじめ買っておいたチョコレートを持って霊とか相談所に向かった。

    去年、律は人生で初めてバレンタインチョコを買い、人生で初めて告白した。そして人生で初めて振られた。相手は兄の師匠、霊幻新隆である。相手は15も年上の大人で自分はまだ中学生である。告白しても受け入れられる可能性は低い事は律にも分かっていた。…しかし自分の恋心に気付いてそのままにしておく事は出来なかった。あるいは尊敬する兄の影響かもしれない。兄はあの高嶺ツボミ相手に正面から告白したのだ。僕だって自分の気持ちに誠実でいたい。告白にチョコを添えたのはちょうどバレンタイン時期でそこかしこにバレンタイン広告を見かけたからだ。兄は花束を持って告白していた。僕はチョコを持っていこう。律は学校帰りにチョコを買うとそのまま相談所に行った。

    結果は散々だった。霊幻新隆は、律の告白を聞くと顔色一つ変えずこう言った。
    「お前さぁ、俺を犯罪者にするつもりか?」
    それだけである。イエスともノーとも言わない。なんて不誠実なんだろうと律は思った。もちろん一方的で突然の告白に誠実に対応する義理は霊幻にないのだが…それにしたって。律は霊幻に詰め寄りいくつか言葉を投げかけた。しかし霊幻は黙って机の上のパソコンに目を落としたまま顔を上げなかった。律は持っていたチョコを机に叩きつけると相談所から走って逃げた。

    ところがである。あんなに脈のない態度だったというのに、次に会った時から霊幻の態度は今までとまるで違っていた。まずボディタッチが増えた。話をするとき肩を抱かれたり除霊前に励ますように腕を軽く叩かれたり、何かにつけて律に触れてくる。今まではむしろ物理的に距離をあけて接されていたように思うのだが。
    それから視線を感じる事も増えた…決して自意識過剰ではないと思う…たぶん。相談所に訪れ依頼のない待ち時間、出張除霊に向かい歩いている時、霊幻と会話もなく二人でいると決まって視線を感じるのだ。霊幻の事を好きだと自覚してからというもの、霊幻をこっそり見ていたのは律の方だった。それなのにこんなに見られていたら霊幻をこっそり見つめられないではないか。
    他にも細かい事はたくさんあった。やたら律自身の事を聞いてくる(僕に興味なかったじゃないか)、こちらが言う前に焼肉に連れてってくれる(以前のように虚無顔ではなく楽しそうだ)、出張除霊帰りにせっかく遠出したのだからと寄り道をして帰ることもあった
    さらに…これが律には決定的だったのだが…相談所の机の引き出しの中に以前律が叩きつけて帰ったチョコレートの箱が仕舞われているのを見つけてしまったのだ。これを見つけたのは本当に偶然で、律は床に落ちていた印鑑を机の引き出しに仕舞おうとしただけなのだ。自分が贈ったものなのだから見間違いようもない。ちなみに空箱だった。食べたのだろうか。

    …もしかしてこれは脈ありという奴ではないか。

    今日だって律を相談所に呼び出したのは霊幻だ。今日は誰も来れないから来てほしいと頼まれたのだ。本当だろうか?今日2/14はバレンタイン、愛を告白する日だと霊幻が知らないわけがない。それともバレンタインを忘れてるのか?

    霊幻さんの態度が変わったのは僕が告白してからだ。これは楽観的な推測だが、ひょっとしたら霊幻さんは自分を好きだと言う人を好きになるタイプなのかもしれない。そういう人もいると聞いたことがある。律はそう思った。そう思いたかった。…そして、チャンスがあるなら掴みたいと思った。

    相談所はもうすぐだ。律は手に持った紙袋の中をもう一度確認する。犬好きの霊幻が気に入るのではないかと可愛い犬型のチョコレートにしたのだか、もっと大人っぽいチョコの方が良かっただろうか…今更考えても仕方ない。このチョコレートを渡しまた言うのだ。「霊幻さん、好きです。」そして今度こそ絶対に。

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