「よお、似合ってんじゃねーか。」
俺がそう声をかけると律は思いっきり顔をしかめた。不服そうな顔でありがとうございますと言うと一拍おいて立て続けに喋りだす。このスーツは自分で選んだわけじゃありません。偶然です。母に勧められたんです。何でもいいと言ったら渡されたのがこれだっただけです。俺は律の長い長い言い訳を聞き流す。どうやらニヤけていたようで律はますます顔をしかめて変な顔してますよと言ってくる。その様子が可笑しくて俺が吹き出してしまうと律はプイと横を向いた。不服そうに膨らんだ頬の丸みが子供らしくて余計面白い。……面白いだけなら良かったのに。可愛い、なんて。俺と同じ色のスーツを律が意識してる事を嬉しいと思うなんてな。