その単語が霊幻の目に止まったのは、家でベッドに寝転がりダラダラとネットサーフィンしている時だった。
彼シャツ、ねぇ。まぁ人気あるジャンルだよな。俺は一度だけ見たことあるアイツの水着姿を思い出した。当然二人きりではない。モブとテルも一緒に海に連れて行ったのだ。まだ子供の細い首と薄い身体に筋肉が少しだけ付いて弾力の良さそうな足をしていた。彼シャツか、フムフム、なるほど、なるほどねぇ。うんうん、これは、これはなかなか…。
霊幻は自分の頬を両手でパンッと叩いた。
これ以上はまずい。止めよう。考えるだけで法に触れそうだ。
霊幻は勢いよく立ち上がると冷たい水を求めて冷蔵庫に歩いていった。
☆☆☆
その単語を律が耳にしたのは、自宅のリビングで付けっぱなしになっていたテレビを消そうとした時だった。
彼シャツ…?ああ、そういう。僕は一度だけ見た事のあるあの人の水着姿を思い出した。あの人は僕よりだいぶ大きいから、僕のシャツを無理矢理着せたらパツンパツンだな。そもそも袖が通らなくて滑稽な事になりそうだ。…滑稽になりそうなのに、僕のシャツが小さくて露わになる意外と逞しい腕や肉が少しだけのる腹を思い浮かべると胸がざわざわする。
律はテレビの電源をパチンと消した。
止めよう、不毛だ。
律はリビングを出ると飲み物を求めて冷蔵庫に向かった。