「どうですか?ドキドキしますか?」
まだ糊のきいた真新しい高校のブレザーに俺の使い込まれたピンクのネクタイを結んだ律は、俺を睨みつけながらそう聞いてきた。俺だって客商売だ。身なりには気を遣ってネクタイもきちんとアイロンをかけてはいるが、真新しいブレザーとシャツには不釣り合いで不格好な気がした。…俺と律が一緒にいるところを客観的に見るとこうなのかもな。
「ドキドキした。さ、俺のネクタイ返してくれ。」
素直に、ただしぶっきらぼうに聞こえるように感情を込めず言うと律はますます眉間にシワを寄せるので笑ってしまう。ドキドキもムラムラもしてるっての。勘弁してくれ。
机に置いてある、まだ新品の匂いがする律のネクタイを自分の首元に結ぶ。
「どうだ?ドキドキするか?」
チッ!律はデカい舌打ちをした。
「ええ…お前俺のこと好きなんじゃなかったか…」
「好きですよ。何か?」
「素直なのか素直じゃないのかハッキリしてくれ。」
律は不思議そうに首を傾げる。その首元には俺のネクタイ。まあ、悪くないな。