スイッチオフ失礼しますッと緊張気味の見た目年上の部下にお疲れ様と声をかけ、扉が静かに閉まると同時に私は大きく伸びをした。
「店じまいか?」
「……そうしよっかな」
やることはつきない、けれど休息も大事だと二十年前に倒れた時に叱られて学んだ。もしかしたら三十年前だったかも。どのみち誤差だけれど。
過労でもひとは死ぬんだぞと風子を叱りながら世界の終わりを見届けた時以上の悲愴の色を浮かべていた青い瞳は、今は満足げに細められて、大きな机に広げられた紙の資料を次々片付けていく。何十年経っても堂々たる雰囲気のボス然とした机は自分には分不相応だと思うけれど、部下たちの表情を見るになんとか取り繕えているようだ。
ふわあ、とこんな風に欠伸をすることもなくなってしまった。
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