Silver Snow ふと、ヒュンケルは顔をあげた。
暖炉にくべられた薪が、かすかな音をたててはぜる。
それまで手にしていたものを床に置いた箱に入れ、麻布をかぶせると、ヒュンケルは、テーブルの上の木屑をさっと払った。
もう一度椅子に落ち着くのと、扉がどんどんと叩かれたのは、ほぼ同時だった。
「錠はしていない。入ってくれ」
声をかけると、厚い木の扉が、軋みながら開く。
外の冷気をまとって、雪だらけの少年が顔を覗かせた。
「あいてんのかよ。不用心じゃねぇの」
扉を後ろ手にしめて、訪問者は雪のついたフードを払う。
「⋯なんて言っても、冬にこんな所まで来る奴なんてまずいないよな」
分厚い手袋をとり、ふかふかとした耳あてをはずすと、額の横で結ばれた黄色の細布が揺れた。雪で湿ってしまったのか、いつもよりその色は鮮やかに見える。
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