いろいろ2髪
「手前、髪伸びたな」
中原が太宰の上に手を伸ばした。肩より少し上辺りまで伸ばした黒髪に触れる。さらりと揺れた柔らかな黒髪から、仄かに香る花の匂い。シャンプーにも拘っているのだろう。
「ちょ、急に何」
「女みてぇに細っこい手足しやがって、だから敵に捕まったりするんだろ」
「はぁ?あれはそう云う作戦で……」
きめ細かい色白な頬に掛かる艷やかな黒髪を、靭やかな指先が掻き上げた。黒目がちの大きな瞳に、瞬く度、睫毛が揺れて影を落とす。胸の膨らみこそ無いが、女性と見紛うばかりの淡麗な容姿である。同性とはいえ、日を追うごとに女性らしさの増す相棒に、思わず息を呑んだ。
「そろそろ、髪、切った方がいいんじゃねぇのか」
「簡単に言うけれどねぇ、僕だって、好きでこんな事しているわけじゃないの!君だって髪を伸ばしているんだから、中也が女装をすれば、全ては丸く収まったんじゃあないか」
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