対峙の時、来るsideソルティコの領主代理
門を封鎖し、橋に手練れの騎士達を待機させたことは正解だった。
……正確に言えば自分の耳に入る前に以上に素早い指揮、手慣れた手回しを行った執事の功績なのだけど。
一行の中に知っている顔がいたらしいけど、それはそれこれはこれ、と割り切ったらしい。
ソルティコは勿論、坊っちゃんに危害を加える者の味方をするのであれば、たとえ旧知の中とは言え見過ごすことは出来ません、ですって。
もう、パパのことも含んであげてよ!
「……でも、流石ですよね」
そのことを告げれば「先に両将軍に特徴を教えていただいたお陰です。そもそもゴリアテ様にお手間を掛けさせる訳にはいきません」と涼しい顔でサラッと言うのでしょうね。目は笑っていないけど笑顔全開のセザールを脳裏に浮かべた数秒後、私の口から言葉が零れ落ちる。
あぁもう、そんなつもりはなかったのに。
背後から歩く騎士から「ゴリアテ様?」と問われてしまうのは当然の事で。
何でもない、と彼に向かって告げると、返ってきたのは顔を真っ赤にしてもぞもぞと言葉と言えるのか怪しい返事だった。どうしてしまったのですか貴方…?
その後ろや隣の騎士達が「うう羨ましい……」と言っていたけれど、何のことなのか私にはわからなかった。
「……皆」
緊張感の薄れを見せる騎士達の士気を纏める必要があると、私の直感が囁く。
あと少しで着く橋にはかの悪名高いかの悪魔の子とソレに従う人間達が先行した騎士と刃を交えているでしょう。
グレイグから聞いた悪魔の子、ホメロスから届いた手紙に書いていた悪魔の子、戦いを見た騎士達から聞かされた悪魔の子。
これらに共通するのは、見た目以上の強さを持つこと。
(そう言えばホメロスは私に悪魔の子の言葉を信用するな、悪魔の子に絆されるな、一人で戦うな。と、何回も書いていた……。私を心配してくれているからなのかもしれない。グレイグからも直接言われたけど、そんなに強い相手のか……)
ホメロスからの手紙の末文に任務が一段落着いたら二人で豊穣祭に行こうって書いていたし、グレイグからは二人で仮装祭に参加しようって言っていたけど、それについては今は置いておきましょう。
優先すべきは、悪魔の子並びに一行の捕縛なのだから。
「そろそろ敵が見えます。気を引き締めるように」
「「「!!」」」
私の言葉は騎士達の心に響いたらしい。彼らの緩んだ頬が引き締まっていく。
皆の瞳の奥に見えるは、誇り高き精神を宿した清き炎。
士気は、充分だ。
「デルカダール王国に仇なす怨敵を捕えましょう」
「「「ハッ!!!!」」」
◼️
眼下に映るは悪魔の子。腕のある騎士達と互角に戦うその姿に、彼らの言葉の意味を本当の意味で理解する。強い。全員がそれぞれの強さを持っている。
「……本気をださなくては」
吐き捨てた言葉と同時に、私は刃を向けていた。
「悪魔の子、お覚悟を」
その刹那、
「なんて」
「きれいなひと、なんだろう」
零れ出た言葉は宙へと溶けていった。
終
「違う…僕は悪魔の子じゃない!!」
「残念ですが、人を惑わす悪魔の言葉を聞くことは出来ないのです」
続……くの……?(今のところ思い付いてない)