あたたかな星 かあ、とからすの声が聞こえた。たぬきの炭治郎は木の枝を拾う手を止めて空を見上げた。
鈍色の空、枯れた冬の木の枝越しにくるり、くるりと丸く円を描くように飛ぶからすはどうやら助けを呼んでいるようだった。
見かけないからすだ。どうしたんだろう。
森でおきる全てのことに関わるわけではないけれど、炭治郎にできることがあるかもしれない。
ある程度溜まった枝を藁をよった紐で結び束にすると背負子に収めて、炭治郎はそちらに行ってみる事にした。
季節は春に近い冬で、時間は午前中だった。昨夜降った雪が枯れ草の上に積もっているので足を滑らせないように気をつけてからすのいる方へ谷を下っていく。
炭治郎はたぬきだが人間に化けられるたぬきだった。家族みんながそうだ。こうして山にいるときは姿はほぼ人間でたぬきの丸い耳と尻尾は出したままの姿でいる。
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