愛されたがりの恋人さん 煙たい。
薄暗いバーは煙草の煙が充満していて、たまに吸う俺でも思わず蒸せてしまう程だった。ゆっくり瞬きする事で瞳の水分を取り戻しながら、ロックグラスを揺らして氷をカラカラと鳴らす。適当に頼んだカクテルは想像してた味と違って苦手な部類だった。あーあ、黙ってワイン頼んどけば良かったな。
重低音で響くいい感じのジャズと、いい感じに酔った男女の大人っぽい会話。いかにもって感じの店だ。
「……ねぇ、聞いてる?」
「!」
「もぉ〜」
真隣から聴こえた甘い声。ふんわりと巻かれたチョコレート色の長い髪が、コテンと傾げた首の動きに合わせてはらはらと垂れる。わざとらしいけど絶妙に可愛らしく顰められた顔は、ちいちゃくてきゅるっとしてて、超かわいい。
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