結んで、祈って、花屋は存外に冷えている。花のためにある空間。それでいて、ひとのためにある空間。
エミリアはこの空間が気に入っている。
開店の準備もそこそこに、彼女は花束をつくっていた。
付き合って長い恋人にプロポーズしたいのだと依頼があった。初めて花屋に入ったであろう、スーツのいでたちの若人は緊張してしどろもどろになっていたけれど、きっと今この世でいちばん幸せなのだ。
季節、花言葉、色すべてを汲み取ってひとつにしていく。しあわせが、分かたれることなどないように。
「どうか二人で幸せに」
そしてどうか、花嫁のブーケも作らせてくださいね。
見ないみらいを祈って、完成した花束にリボンを結んだ。