同じ星を見ていた/グリレ◇
「星が、落ちてきたよ、ピカチュウ」
極寒過酷の地、認められし者以外の立ち入りを禁じられているシロガネ山。
年がら年中吹雪いているこの地では珍しく、雪の止んだ穏やかな夜だった。
久しく見上げた夜空には、一際大きな彗星が悠々と泳いでいた。月よりも煌々と輝くそれは、雪原を明るく照らしている。
「これが、千年彗星……」
思わず星に伸ばした手は何も掴めず、宙を切る。触れる訳ないのにバカだな、と自嘲気味に笑えば、掠れてやや低くなった、自分の聞き慣れない笑い声が耳に障る。山籠りをしている数年の間に、身体は一向に成長していない癖に、声変わりだけは始まっていた。
闇夜に生きることに慣れてしまった目には、星明かりすらも眩しくて眩暈がする。
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