【ブラ晶♀】特別な夜 子供じゃないです、と告げた声は、舌足らずで子供みたいだった。だから、精一杯の誘惑は情けなく失敗したと思ったのに。
「――へえ?」
不敵に口端を持ち上げたブラッドリーの、ロゼの瞳がぎらついた情欲を灯した。あ、と小さく息を呑むと同時、彼の指先が私のこめかみに触れる。髪をするりと梳きながら、無骨な指先は後頭部へと回っていった。そのまま彼の重みを掛けられて、私の身体はゆっくりとソファへ沈んでいく。私の顔の横に手を突いた彼が、何かを言おうとくちびるをひらく。ああ、私はこの部屋で初めて夜を過ごすのだと、――緊張しながらも期待したのだけれど。
「《アルシム》」
聞き慣れた短い呪文が静寂に響いて、かちゃりと空間の扉がひらいた。えっ、と私は固まって、ブラッドリーは一瞬で眼差しを鋭くして咄嗟に銃を取り出す。
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