しとしと、と雨が降る渋谷。
暁人は霧に覆われ、人々が姿を消し、渋谷を救った日のことを思い出していた。
あの時も、狭い渋谷の中で各所で降ってたりしていた。照法師がいると雨が下から上に流れていっていたのは、霊障だとしてもちょっと幻想的で面白かった。
ふと、右手を見る。
あの時はKKの声が聞こえ、靄が掛かっていたが、麻里や父さんと母さんと別れ、鳥居を抜けた後に、彼も成仏したらしく靄もなくなり、彼は自分の中から消えていった。
右手が寂しい。
はぁ、とため息をつき、いつものように神社へと向かって歩く。
あの事件で着いた習慣だ。何となく手を合わせると、いいことがある気がして時間さえあれば、巡って手を合わせに行く。
暫く歩くと神社に着く。今日は凪いだ空気とは裏腹にザワザワとした空気だ。
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