wait a minutes「……少しボリュームを下げられないか」
「ああ?」
ドロップシップのブースで、ヘッドホンをして大騒ぎでゲーム配信をしていた俺へのコメントの洪水。画面越しの何万人のファンよりも、俺は後ろの気配に気を取られる。手元のスイッチでマイクをミュートして振り返ろうとすると、ゲーミングチェアの横からヌッと手が出てきて手早くインカメラの接続も切られる。すぐ後ろにある気配に顔をあげると少し眉を顰めた神経質な男の唇があった。マウスに置いた手に腕を絡めてぐいと引っ張り、頬や唇へ軽くスタンプする。
「怖い顔すんなよ、男前が台無しだぜ?」
「…………」
配信中とは打って変わって、ごく親密な、猫撫で声。
俺の配信を止めた主、クリプトは、まだ難しい顔をしたまま、チェアに覆い被さるように両手を置いて俺の唇を追ってぱくんと食べた。
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