さいわい大英帝国の裁判所に、今日も木槌が鳴り響く。
検察席には亜双義が立ち、その補佐としてバンジークスが控えている。
審議は滞りなく進み、検察側の主張通りの罪状にて被告人は有罪となった。
これにて閉廷、という間際、被告人が叫んだ。
「なぜ私が、東洋の猿になど断罪されねばならんのだ!しかも前科者のくせに…」
憤るままの罵声が終わる前に、鋼鉄の踵が高らかに振り落とされたのは言うまでもない。
諸々の手続きを終え、二人は自分たちの執務室へと戻る。
検事局の廊下を進む間はお互い黙ったまま、すれ違った人々がみな関わり合いたくないと感じるような重い空気をまとっていた。
部屋に入り、鈍い音を立てて扉が閉まる。
それを待ちかねていたかのように、亜双義は笑い出した。
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