錆びた歯車は動き出す ずっと子供でいたかった。
そんなことを言っても、もう何もかもが遅いよ。
ずっと子供でいたかったな。
ぽつりと再びそうこぼしたいつかの自分を、俺は鼻で笑った。そんなの、ただの現実逃避だよ。それを聞いて恨めし気にこちらをみる前世の大人の自分と、十五歳の今の自分が対峙する。随分とやつれた様子の過去の自分をみて目を細めた。この時の自分は自分の命がすぐに失われることを知らなかった。そして生まれかわることも。
人生二回目なんて経験したくてもできないことだ。かつて社会の歯車の一つとして働いていた自分は錆びていたけれど、今の自分は違う。若くて、他の人にはない不思議な力もあって、大切な守りたい人も出来た。その大切な人を守るために、この世界でいきるためには大人にならなければいけない。子供のままでいることを許してはくれない。
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