愛の炎 ひらり、赤く染まったカエデの葉が落ちてきた。
積み重なったそれらが彩る道を、私はゆっくりと歩いていた。遠くからサイレンの音が聞こえる。頬にふれる冷ややかな空気を感じて、首もとのストールをたぐり寄せる。乾いた空気の中にかすかに香る煙たさに咳払いして、私は振り返らずに歩く。
貴方の告白は私にとって最悪のものだった。
これまで過ごしてきた数年。モノクロだった私の世界は、貴方との出会いによって染めあげられた。温かくて幸せで、このために生まれてきた。そう思える時間ばかりだった。私の人生は、貴方と歩むためにある。そう思えて、嬉しくて、満ち足りていて。
貴方の瞳が宙を泳ぐ。その瞬間に気付かなければよかったのだろうか。少しずつ降り積もっていく違和感、ずれていく歯車に目をそらし続けて、隣にある貴方の体温だけを信じれば良かったのだろうか。
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