キスの日 らくがき文 ノックの音に答えると、赤い頬をしたリサが神妙な顔をして部屋へと入ってきた。
「あらリサ。どうかしたんですか?」
「この前借りてた本読み終わったから、返しに来たんだ」
「わざわざ返しに来てくださるなんて、ありがとうございます」
出迎えたリイラに本を差し出しながら、瞳を伏せたリサの様子はなんだかぎこちない。
「どうしました? 何かありましたか?」
リサはぶんぶんと首を横に振る。
「なんでもない! 本、面白かったよ」
「まあ、それはよかった。好きなお話なので、そう言っていただけて嬉しいです」
「面白かったん……だけど……」
なんとも歯切れの悪い反応だ。不思議に思ったリイラは問いかける。
「ラブストーリーはあまりお得意ではございませんか?」
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