おまえの幸福(ハッピー)に口づけを　バーン大戦から月日は流れ、勇者も無事に帰還した。
　世界は穏やかな平和へと少しずつ歩んでいるというのに、我らがアバンの使徒の長兄役ときたら。相変わらず「オレには幸せになる資格はない」「誰かを幸せにすることもできない」のスタンスを崩さない。諭しても叱っても説得してもがんとして譲らない男にキレた大魔道士は、ありったけの魔法と技術を注ぎ込んでひとつの魔法具を造り上げた。

　ヒュンケルを誤魔化しだまくらかして装備させたのは、条件を満たさなくては外せない呪いをかけた首飾り。
「いいか？ そいつには、おまえが自分を卑下したり貶めたりするたびにペナルティを与える術がかかってる。こうでもしねえとおまえの自己評価は変えられねえからな。それが嫌ならさっさと意識改革しやがれ。うまくできたら外してやるよ」
「余計な真似を……言っておくが、多少の苦痛で止められるオレではないぞ」
「へっへ、んなこた分かってらあ。ペナルティたって痛くも苦しくもねえよ。けど、男なら大抵のやつにとって恥も恥っていう最低な罰さ」






「てめえが自分を『幸せになる資格がない』と下げるたび。おれがてめえに抱きついてキッスする」
「は？」