魔人の報復 おれはどうなってもいい。死んでもいい。ここでこのまま殺されてもいいから。
そいつのことは助けてくれ。
マァムを殺さないでくれ。
ズタボロになって命乞いをする、今は亡き仇敵の弟子。
ほんの一端、成長と脅威の兆しを見せたのが嘘のように這いつくばり、惨めに、無様に、師の敵に頭を下げる小僧。
望み通りくびり殺してやる義理はない。
蚊がつついたほどのダメージとはいえ、こやつはオレに傷をつけた。そんな相手の望みを叶えてやる必要がどこにある。
ではこの小娘を今すぐ殺すか。こやつはどうも死にかけのこの小娘に惚れているらしい。ならば、目の前で無惨に女の命を奪い、こいつの心を絶望でズタズタにしてから殺してやろうか。
……否。それよりも、その前に。
「……いいだろう」
どうせ最後に全員殺すつもりなら。もっと勿体つけて楽しもうではないか。
「ただし。今ここで、貴様が提げたその首飾りを踏み砕け」
もっと、残酷に。徹底的に。
「アバンの使徒のしるしを破壊し、オレの軍門に下れ」
尊厳も、仲間も、魂もなにもかも。完膚なきまでに破壊してやろう。
「貴様が魔王軍の一員となり……勇者を殺すことができれば。この小娘の命を助けてやろう」
マァムを助けたければ。
魔法使いの小僧よ。
その手で、勇者ダイを殺せ。