「声が、出ない?」
「正確には、聞き取れない位ものすごく小さい声しか出ない、だね」
レインが反復したオーターの現状にカルドが補足を加えた。
よく晴れた午後の温まった会議室で、オーターの横で共に遠征から帰還したレナトスがくわりと欠伸をして、不意打ちでさぁと笑う。
「こいつが魔法陣の解析してる間、背後の防御は任せられたけどよぉ。こいつなら避けると思うじゃん?あそこで妖精魔法を食らうとか、いやー珍しいもんみた、って、あっぶね!」
オーターから鋭く放たれた砂を僅差で避けたレナトスは、やめろ!首はくっつけんのに時間がかかんだよ!と騒ぎつつも豪快に笑ってオーターの肩を叩く。オーターは馴染みの長い溜息と共にメガネを上げた。
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