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    mofumofuhorse

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    mofumofuhorse

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    オタレイ⌛️☔️
    「キスで交わした相手の唾液を飲まないと声が出ないご都合魔法」の話
    途中ですがこれだけでも読めるかと。
    進んだら追記かまとめたいです。

    「声が、出ない?」
    「正確には、聞き取れない位ものすごく小さい声しか出ない、だね」

    レインが反復したオーターの現状にカルドが補足を加えた。
    よく晴れた午後の温まった会議室で、オーターの横で共に遠征から帰還したレナトスがくわりと欠伸をして、不意打ちでさぁと笑う。

    「こいつが魔法陣の解析してる間、背後の防御は任せられたけどよぉ。こいつなら避けると思うじゃん?あそこで妖精魔法を食らうとか、いやー珍しいもんみた、って、あっぶね!」

    オーターから鋭く放たれた砂を僅差で避けたレナトスは、やめろ!首はくっつけんのに時間がかかんだよ!と騒ぎつつも豪快に笑ってオーターの肩を叩く。オーターは馴染みの長い溜息と共にメガネを上げた。
    これだけならいつもの光景である。違うのは、いつもは端的でも必ず挟まるオーターの反論がないこと。レインは、背後で交わされる戯れを肩越しに見て、オーターの眉間の皺に不機嫌の度合いを察する。

    「はいはい。その辺で」

    カルドがパンパンと手を叩き、ずっとあんな感じでね、とレインに向き直る。

    「声以外はどこにも問題はないんだけど、局員への指示や伝言うさぎでの伝達が円滑にいかないのは面倒なんだ」

    にこやかな声音と反するカルドの棘に、レインの背後でオーターの気配は鋭さを増す。声はかけるが2人の戯れを止めに入る事は無いのがカルドの彼たるところだ。オーターの砂の動線をレインの影で的確に遮りながらのその態度は、策士というか、実力故の胆力というか。
    忙しいところ悪いけど、レインじゃないと解けないんだと、笑みを崩さないカルドに、レインは複雑な感情を禁じ得ない。読めない先達に眇めた視線で返すも、今はやるべき事を求めてレインが口を開こうとした時、その視界の端にレナトスが入り込んだ。

    「まーまーまー」
    「…っっ!」

    仲裁のつもりか、レナトスがオーターに対するものと同様の親しさでレインの背を勢いよく叩き、その衝撃にレインの息が詰まる。1歩踏み出すことを意地で耐えたレインの肩をレナトスは称えるように軽く叩くと、その足先は会議室の外へ続くドアへ向けられた。カルドも踵を返してその後に続く。

    「妖精魔法の解除は、王子様の力が必要だとさ。ま、ガーンバレ」
    「お約束だね。人払いはしておくから、オーターをよろしくね、レイン」
    「ちょっ…!!」

    各々の言いたい事とひらりと振られた手の軌跡を残して、無情にもドアは閉まる。異なる色味の銀糸を見送り、レインは思わず眉間に皺を寄せた。
    オレにしか出来ないこと。王子様の力ってなんだ。
    体よく面倒事を押し付けられた気配にレインはため息とともに長い前髪をかきあげた。

    ◇◇◇◇◇◇

    当のオーターは、不機嫌の具現体だった。
    レナトスの横にいた最初の立位置から直立不動で口を噤んだまま。任務の失態にか、あの二人からの扱いにか、いずれにしても憮然とした態度は、恋人と2人きりになっても変わらないとは大人気ない。相当にキているらしい。
    カルド達の代わりにオーターに説明を求めたいが話せないのだから仕方ないと、レインは解除方法のヒントを探して部屋を見回した。会議机の上にはなにも置かれておらず、説明は先程の口頭のみ。全てを不精しそうなほど不機嫌なオーターに、これは歩み寄ってやらねば話が進まないことを知る。

    「本当に他の異常はないですね?」

    オーターの魔力の波に乱れはなく、こくりと頷いたオーターに肩の力が抜けるも、落ち着いた低音が返らないことにはやはり違和感がある。互いに言葉数は多くないから、さほど影響はないのではと思っていたが、問えば返る声にレインの耳は慣れてしまったらしい。
    気恥しいような感覚を早く流したくて、レインは「それで」と話を続けた。

    「オレなら解除出来るって、方法はなんですか?」

    窓際の棚にメモ用紙を見つけて筆談なら出来るだろうと踏み出したレインの足元に影が指す。

    「オーターさ、んっ?!」

    振り返りざま、眼前に近づいていたオーターがネクタイを引かれてつんのめったレインがたたらを踏んだ。その一瞬、唇に掠めた柔らかさ。
    オーターの伏せた長いまつ毛がレインの見開いた視界に強く残った。

    「ッつ!!な、、んですか、突然!!」

    首への衝撃を無視してネクタイを引く腕を掴んで問うと、床にオーターの砂で文字が綴られる。
    出来るなら早くやれ。舌打ちを恋人としての矜恃でどうにか耐えたレインは、記された文字に虚を突かれた。

    ”他人の魔力を飲みこむこと”
    「はい?」
    ”声を戻す方法”
    「……具体的には何をすれば?」
    ”キス”
    「っ……!!」

    レインの頬にぶわりと熱が上がった。
    先の2人も含めて身近な同僚は皆、オーターとレインが恋仲にあることを知っている。それなりに情も身体も重ねてはあても、2人に仕事場での特別な触れ合いは無かった。親密な距離で交わす触れ合いは、互いの家で、プライベートな時間のみ。
    規律を重んじるオーターは、公私を明確にしたいだろうし、とは言い訳じみたレインの主観で、実際は潔癖なつもりは無く、なんとなく互いに機会がなかったから。だから、急にこんな形で口付けを交わすなど、そんな。
    戸惑うレインを他所に、オーターは振り払われた腕が再び取る。伺いを立てるように覗き込んできたオーターの瞳はとろりと重たげな色味で、その奥にレインは自身の姿を見る。

    “レイン“

    囚われた視界のなか、空気の音で名前を呼ばれた。唇の形だけで分かるほどに見慣れた動き。
    すいと伸ばされたオーターの手。その乾いた指がレインの唇に当てられた。ふにりと、中指と薬指が下唇を押し下げる。内側の粘膜が外気に触れる感覚に、レインの息が震えて。

    “お前が、欲しい“

    その瞬間さえ奪い取るように、オーターのくちびるが重なった。

    ◇◇◇

    「ン、…っふ、ぅ」

    互いの吐息だけが漂う静かな口付け。その中で徐々に大きくなる水音が羞恥を募らせて、レインは堪らずに目を瞑った。オーターから絡められた舌は、ぢぅ、と音を立てて吸われ、口端まで隙間なく密着して口内を探られて、レインの背筋に甘いざわめきを残す。
    レインはキスが好きだ。オーターに触れていないと出来ないから。肌で、香りで、体温で、そこにいるオーターを感じる。情を交わして互いに興奮を高めあって、求めた分を求められるからこそ気持ちがいい。好きな人が自分と気持ちよくなってくれることがこんなにも嬉しいなど、オーターとシて初めて理解した事のひとつだった。
    だから、唾液の受け渡しが目的のこのキスにだって、求められる限り全部、応えたい。

    オーダーの舌がレインのそれの根元を執拗に刺激して、唾液の分泌を促される。思考の総てがあたたかな霧に霞んで緩やかな微睡みの中にいるようで、ぬめる舌が口蓋をくすぐる動きが気持ちが良い。
    舌先を伸ばしてレインの咥内を縦横無尽に舐めしゃぶり、舌に絡みつく動き。必死に応えるうちに徐々に身体に力が入らなくなってきたレインの咥内が遂に満ちて、口端からこぷりと溢れそうになった2人分の唾液。レインが慌てて目を開いたその時、オーターに一層強く吸い上げられた。ずっ、じゅぅう。喉の奥から胸元までが引き上がるように錯覚。レインの肌が一斉にざわめき、刮目したまま全身が震える。同時に既にぎりぎりで震え立っていた両脚の限界を感じて、握り込んだオーターのローブを掴んだ。言外に離してくれと合わせた顔を背けると、存外あっさりと叶えられた。

    「ぁ…は、ふぁ…」

    解放された舌先はじんじんと熱く脈打ち、甘い痺れが広がる。肩で整えるレインの息に知らず熱がのる。その背をオーターの手が柔らかく撫でて、引き寄せられた。

    「ぁ、おーたー…さ、」

    レインは抗わず、オーターに導かれるままにその胸に身体を預けた。
    人ひとりが縋りついても揺らがない体幹は流石で、安心して力が抜ける。近くなった距離で肩をさすられたレインは、顔を合わせたオーターの口の動きを見る。

    “レイン”

    “もう一度”

    オーターの口がぱかりと開けられた。雛鳥のような無防備さとは裏腹に奥に覗く赤い舌は、レインを捕まえようと待ち構えてちらりと動く。琥珀の瞳がいつもより色を深めて、レインを求めて待っている。
    そこに否があるはずもない。レインはこくりとひとつ息を呑むと、唇を薄く開いたまま吸い寄せられるように再びオーターと唇をあわせた。
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