お迎え 恥ずかしさなんて、と人は言うかもしれない。だが尊大な羞恥心と臆病な自尊心を後生大事に抱えて今まで生きてきたマトリフにとっては、はじめて抱かれた記憶は途轍もなく大変なものだった。
いや、本当はオレが余裕たっぷりにリードしてやるつもりだったんだとマトリフは思い返す。ガンガディアがそういう行為に疎いと思い込んでいたからだ。
だがいざその時になると、あれよあれよという間にマトリフは翻弄されていた。散々に啼かされ、身体に快感を刻まれ、本能のままに何か口走っていた。そんな記憶は都合よく消えてはくれず、思い出すたびに顔から火炎系呪文が撃てそうなほどだった。
「鬱陶しいぞ」
苛立った声が聞こえてきたが無視する。マトリフは一旦冷静になろうと訪れた地底魔城で膝を抱えていた。そこへこの城の主であるハドラーが通りかかって煩く文句を言ってきていた。無視だ無視。オレは一人で冷静に考え事がしたいのだと、マトリフはハドラーに背を向けている。
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