乱れたシーツ。
朝尊の部屋の、重い空気。
言いたくなかった。
けど、言わずにはいられなかった。
「……ねえ朝尊、どうして私、なの?」
その問いに、朝尊はタバコを咥えながら、ちらと彼女を見る。
「……どうして、とは?」
「だって、わたしは……マフィアでも、武器でも、部下でもない。ただの一般人で。ただ、偶然出会って、たまたま拾われただけで……朝尊にとって、“お気に入りの一人”にすぎなくて……」
震える声。すがるような目。
答えが返ってくることにどこか怯えている。
「好き」と言ったら、自分の中で、全部が壊れてしまうような気がして。
──『あなたが好き』なんて、口にできるわけがない。
沈黙。
ぐしゃりと灰皿にタバコを押し付ける音がする。
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