中学生合宿編のクリブレ
※よあけ様視点
※めっちゃ都合良い展開
※開催地は蒼天の施設(?)
※夏休み1週間の合宿
※きよちゃんと蒼天問題児ちゃんたちのキャラ崩壊してたらごめん😭
※ヒロリリも合宿参加してる(あんまり関係はないかもだけど)
開会のライブを終えて、みんながホールに集められた。きよちゃんの隣に座って大人しく講師の話を聞いてた。正直、話つまんないし、そんな事よりもさっきのライブの反省ばっかり頭に浮かんでくる。
合宿に参加しているグループ順番でライブを披露した。ちょっとした大会みたいで楽しそうだなと思った。やる前は。
実際、きよちゃんよりすごい人もいなかったし、中学生なんか大したことないなってやっぱ思った。
「ねぇよあけちゃん聞いてた?きよたち別々の部屋になっちゃったね」
「…?部屋?」
「合宿の部屋割り!きよもよあけちゃんも蒼天の子と一緒みたいだよ」
「……え…」
全然聞いてなかったが、どうやらきよちゃん以外の人間と一夜を明かさなくてはいけないらしい。いや、1週間はあるから一夜どころじゃないが。
蒼天……といえばあのお金持ちそうな人たちか。誰が一緒でもきよちゃん以外はお断りなのだが、せめてマシな人であったら良いと願う。
ーーー
「この僕と同じ部屋だなんて、ラッキーだったね!!」
「よあけ、帰る」
「なんだと!?ちょ、待てよ!!!」
最悪だ。どう考えてもあの中で1番ヤバいやつを引いた。よあけが1番苦手な騒がしくてめんどくさい人間と、この1週間過ごすなんてあまりにも拷問すぎる。
「もぉ〜よあけちゃん、そんなこと言っちゃだめだよ!一緒に頑張ろう?ね?」
「ん〜〜〜…」
きよちゃんが腕に抱きつきながらよあけのことをたしなめる。きよちゃんの可愛さに免じて我慢してやろうとは思ったけど、どう考えてもやっていける気がしない。重い足をなんとかあげながら目の前を歩く黒川ゆうりと一緒に部屋に入った。
「…あのさ、まるで僕のことハズレみたいな態度取ってるけど、僕からしたらキミだっておんなじようなもんだよ」
「でもよあけは静かだからよあけの勝ちだよ」
「急に意味わかんない勝負するなよ!勝手に負かすな!」
「あー……うるさい…」
狭い部屋に黒川ゆうりの声がキンキンと響く。こんなにうるさい人と話すこともなかなか無いだろう。うるさいといば、かようちゃんも割とうるさいけど、黒川のようにキャンキャンしてる感じではなかったハズ。
ーーー
午後10時。食堂でお夕飯を食べて大浴場でお風呂に入り、やっと部屋で一息つく。昔から大人数で行動しなくちゃいけない行事が嫌いだったことを今更思い出す。
「あ、烏丸よあけもお風呂上がったんだ」
「……」
「無視かよ〜……もういいけどさ。僕も慣れたもんね」
ベッドの上できよちゃんの好きな曲を聴く。この時間は誰にも邪魔されたくない。なので黒川のことも無視をした。
それからどんどん時間が過ぎて、あっという間に0時をまわる。黒川も静かなので、流石に寝たのかと隣を見やると、何やら机でペンを走らせていた。別に黒川が何をしているかなんて興味なかったけど、何となく、ただなんとなく彼女の机を覗き込んだ。
「……おまえ、曲つくれるんだ」
「うわっ!?ビックリした!!勝手に見るなよ〜まぁ天才の僕が生み出す曲が気になっちゃうのは分かるけどね!」
「………」
「そ、そんなに気になる…?もしかしてキミも曲作ってるの?」
「そうだよ。よあけは曲と衣装担当だから」
「衣装も!?ぐぬぬ……」
何に対してぐぬぬしてるかは分からないけど、多分黒川は作曲のセンスがあるんだろうなというのは何となく分かった。あんなに楽しそうに書いているんだから紛れもなく才能があるんだろう。よあけは曲に対してはそこまでの情熱がない……というより、兄の影響を色濃く受けてしまう曲作りになるのが自分の中で納得いかないのだ。
「そうだ!キミが書いた曲も見せてよ!何曲かは聴いたことあるけど!あ、書いてるところも見たい!」
「……うん、いいよ」
「やった!ちょっと煮詰まってたから息抜きしたかったんだよなー」
それから、また数時間お互いに作曲について語り合ったりした。気づけば2時だ。
「さすがに眠くなってきた……もう寝よ〜…」
「そうだね…よあけも話疲れた」
「キミ、普通に喋れるじゃん。普段からそうしてたらいいのに」
「余計なお世話だよ。まぁでも…おまえとは仲良くしてあげてもいいよ、黒川さん」
「うーん!なんか釈然としない気がするぞ!」
そんな会話をして、すぐにお互いベッドの中で眠りについた。黒川との会話は正直楽しかったが……それでも帰りたい気持ちはさほど変わらなかった。
ーーー
ダンス、歌、スクールアイドルに必要なレッスンを2日、3日とこなしていく。その全てがどれもレベルの低い…正確には参加している中学生たちのレベルが低く思えてしょうがなかった。そして多分よあけは嫌われている。講師たちの策略がなんなのか分からないが、きよちゃんとレッスンが被る事は全くなかった。
そんな中、黒川とは多少なり仲良くなった気がする。向こうが一方的に噛み付いてくる時も多々あるけど、そんなに嫌じゃ無い…なんて思ってしまう自分が何だか変わってしまったみたいで嫌だった。
「えっと…烏丸サン、よな?」
「そうだよ。先輩がすごいデザイナーって事、よあけ知ってるよ。だからこの衣装のデザイン見て」
「み、見るけど……アドバイスとかした方がええの?」
「そりゃそうだよ。よあけは最高の衣装をきよちゃんに着てもらいたいの」
「うーん………」
よあけは噂のデザイナー、竹澤氷露の元へ押しかけていた。服をデザインしたり作るのは好きだし、ちょうど良い機会なので才能がある人に見てもらいたかった。でも、あの竹澤氷露という名の人物がこんな頼りなさそうな人だとは思ってなかったのでちょっとショックだ。
「……ほんま凄いな。デザインの勉強しとるわけちゃうんやろ?ここまで描ければ大したモンだと…」
「そういうのいい。もっと、プロの目線で見て」
「プロ!?いや…別にアタシはプロちゃうけど……じゃあ思った事言ってもええ?」
「うん。言って」
竹澤は一呼吸置いてからよあけのデザインに目を落とす。
「そうやな、まずは胸元のフリルが変かな…せっかくのシルエットが死んどる。腰回りも多分このデザインだと生地はちゃんと選んだ方がええで。後ろのリボンも要らん気ぃするな……きよちゃんってあの、メンバーの子やろ?あの子の体型から察するに、つけるにしてももっと小さめの方がええよ。あと…」
それから竹澤は15分ぐらいアドバイスという名のダメ出しを続けた。よあけは放心状態だった。目の前の圧倒的な才能に、ただ肯定するしかなかった。
「こんなところやなぁ……あ、か、烏丸サン……その…気ぃ悪くしてたらごめんな…」
「…別に。ありがとう先輩。」
よあけはおじぎをしてすぐに自分の部屋に戻った。悔しかった。衣装に関しては自信があったのに。……自分が1番、きよちゃんが素敵に見える衣装を描けるハズなのに。
「あーーー今日も疲れた!!みおも桃菜も意外と体力あるなー……およよ!?どうしたんだよ烏丸よあけ!」
「……先輩にダメ出しされたから衣装デザイン直してる」
よあけの泣きそうな顔を見て、黒川はギョッと驚いた。だが、馬鹿にするでもなく、どこか心配そうな顔をしてくるので逆にムカついた。
「僕はキミの衣装センスも結構好きだけどさ、上には上がいるんだね」
「おまえの服のセンスは変だもんね。お兄ちゃんと同じぐらい変」
「なにおう!?…今、さらっと身内までディスったな?それはさておき、その先輩というのはもしかしてヒロちゃん先輩かな??」
「そうだよ。思い出したらムカついてきた」
「へぇ、キミでも悔しいとか思ったりするんだね」
「?よあけ、悔しいとか一言も言ってないし」
よあけがそう言うと、黒川は「はいはい」とだけ返してさっさと机に向かった。何だか今日はすごく眠くて、もう何も頑張れない気がした。そういえば最近全然きよちゃんとも話せていない。早く合宿なんて終われば良いのに。
ーーー
合宿まで残り3日。最終日には初日同様ライブを行うらしい。だが、新曲、新衣装という条件付きだ。さっそくきよちゃんと打ち合わせをする事にした。
「最初によあけが曲を作って、きよちゃんが振り付けを考える。その後に衣装を作るね」
「うん…」
「…?きよちゃん、どうかした?」
なんだか元気のないきよちゃんに、どうしようもなく不安な気持ちになる。この数日間でよあけのこと嫌いになったりしてないだろうか…なんて、自分よがりな心配ばっかりしてしまう。
「あのさ、たまにはきよが歌詞考えたい!歌割りとかも!よあけちゃんやることいっぱいだし!」
「えっ…大丈夫だよ。よあけなら絶対きよちゃんが1番可愛くてキラキラする歌詞もステージも作れるよ」
「う、うん…」
きよちゃんは優しい。タスクの多いよあけの事を考えてくれたんだと思う。でも、よあけはきよちゃんの為なら何でもできるし何も苦しくもない。そもそも、きよちゃんの為に何かをしている時間が世界一幸せな時間なのだ。
「あ、そろそろ次のレッスン始まっちゃうね。よあけ、行きたくないなぁ。…また明日お話ししようね」
「……そうだね」
納得いかなそうなきよちゃんに手を振って、別の方向に歩き始めた。そして今日も何事もなく、つまらないレッスンを終える。
部屋に着くとすでに黒川は帰ってきており、真剣な顔で曲作りに励んでいた。彼女もまたライブのために新曲を練っているのだろう。
「大変そうだね、ゆうりちゃん」
「よあけちゃん!僕なら全然問題ないぞ!次から次に天才的フレーズが浮かんでくるからね!」
「………おまえらしいね」
「うぉい!何だよその目!キミも曲作るんだろ〜!」
「よあけだって天才的?フレーズすぐ浮かぶよ」
そう言ってよあけも机に向かった。実際曲自体は既に頭に浮かんでいたからそれを素直に組み立てるだけで時間はかからないだろう。衣装も事前に竹澤氷露にアドバイスをもらったやつを修正して作るつもりだ。自分の作った曲を、自分の作った衣装を着て踊るきよちゃんを想像する。自然と顔が緩んだ。
「そういえば、よあけちゃんって歌パートとか少なかったよね。ヘタなわけじゃないのに何でなんだい?」
「よあけが歌うより、きよちゃんが歌った方が良いから」
「相変わらず思想が強いや!でもさ、こういうのってバランスが大事〜とか言うじゃんか」
「別にバランスも良いよ」
「あちゃ〜ダメだこりゃ…」
黒川が言いたいことは分かる。実際何度か他の人にも言われたことはあるけど、よあけはあくまでもきよちゃんのバックダンサー…的なものでいいんだ。最初からそういうかたちで曲もステージも作ってあるし、そんなに違和感はないと思っている。ひとしきり作り終えてからベッドに倒れ込んだ。あと3日…3日の我慢だ…。
今だにガリガリと曲作りをしている黒川の背中を見ながら眠りについた。
ーーー
合宿まで残り2日。そろそろ明日のライブに向けた練習を始めなければいけないので、急いできよちゃんの元に向かう。今日は通常レッスンは無しで、1日中練習の時間にしても良いらしい。つまり、ずーっときよちゃんと一緒に居られるのだ!それだけで心がドキドキわくわくしていた。
きよちゃんと待ち合わせたテラスの席に着くと、既にきよちゃんが座っていた。よあけも10分前に来たのに…それより早いなんて流石きよちゃんだなと思った。
「きよちゃんお待たせ。作った曲と、衣装持ってきたよ。こっちはまだ作りかけだけど…」
「ありがとう。聴いていいかな?」
「うん!」
よあけのiPhoneにイヤホンを繋げてきよちゃんに渡す。きよちゃんは真剣な顔でよあけの作った曲を聴いている。いつもこの瞬間はすごく緊張する。1秒1秒が長く感じて、まだ聴き終わらないかな…?とソワソワしてしまう。
やっと聴き終えたようで、きよちゃんは静かにイヤホンを外してよあけにスマホを返した。
「どうかな…?」
「衣装も見ていい?」
「えっ…うん……これだよ」
よあけは言われるがままに作りかけの衣装とデザイン画を出した。いつもは曲を聴き終えた後、必ず何か言ってくれるんだけど…なんかすごく嫌な予感がする。気に入らなかったのだろうか……でも大丈夫。他にも何曲かストックはあるし、どれかは刺さってくれるはず。
「……流石よあけちゃん。この曲も衣装も…全部きよの好きなものばっかりだね」
「そうだよ!よあけはね、きよちゃんの好きなものなんでも知ってるよ」
「よあけちゃんは?」
「え?」
きよちゃんは今にも泣きそうな顔をしている。なぜこんな事になっているのか、きよちゃんが何を言いたいのか、全然察せない。この後しよちゃんの口からどんな言葉が紡がれるのか、予期ができない。
「…よあけちゃんの好きなものがなにもないじゃん…」
「よ、よあけの好きなものはきよちゃんだよ。きよちゃんの好きなものはよあけの…」
「そういう事じゃないでしょ!」
バンっ!と、きよちゃんがテーブルを叩いた音が響き渡った。あまりに突然の出来事に、頭が真っ白になる。そして全身から血の気がひいていく感じがした。
「きよたちは2人でCrystal Day Breakなのに…いっつもよあけちゃんは手を抜いてる!こんなのきよのためでも何でもないよ… 」
「…そんなことない!きよちゃんが1番キラキラできる最善の…」
「できるわけないでしょ!きよはソロじゃない!よあけちゃんが本気でやってくれなきゃキラキラなんかできるわけないよ!……寂しいんだよ…ずっと……」
きよちゃんはボロボロと大粒の涙を流すと、そのまま席を立ってしまった。追いかけようとか、何か言おうとか、思考はできるのに身体が全く動かない。とりあえず、多分、よあけが悪い、はず。置かれた衣装を片付けて一旦部屋に戻る事にした。
部屋に戻ると、手に持っているものをベッドの上に全て投げ捨てた。さて、これからどうしたものか。ライブは明日だ。でもこの曲、この構成、この衣装じゃきよちゃんは納得してくれない。だからと言って……今まできよちゃんの為を思って最高のものを作ってきたのだから、今更どうすればいいのか全く分からなかった。
「よあけの好きなもの…そんなの……どうでもいいじゃん……」
ポツリと呟く。するとガチャリとドアが開く音が聞こえた。黒川が帰ってきた…わけではなく、そこには蒼天の……金髪のハーフの人が立っていた。
「あれれ、ゆうりちゃん居ないかぁ〜……あ、勝手に入っちゃってごめんね?」
「いいよ…やっぱり良くないかも」
「う〜んごめんね〜…何かお詫びした方がいいかな?…烏丸よあけちゃん!」
「その呼び方何…フルネームじゃなくていい。じゃあお詫びしてもらう。よあけの質問に答えて」
「すごい早口!私に答えられる事ならなんでもいいよ〜」
金髪の人…もとい、相良リリアーナ を部屋に入れると、ベッドに2人で腰掛けた。こんなことしてる場合でもないかもしれないが、今はただ、誰かの意見が欲しかった。この人に言って解決するかは分からないが。
「…よあけはね、きよちゃんを1番のスクールアイドルにしたいの。だからね、よあけは別に目立たなくていいというか…いらないというか……。でもきよちゃんはよく思ってないみたい。これ、よあけが変なの?」
「わぁ……なんというか……私にも刺さる話されちゃってビックリかも〜…えへ…」
彼女の地雷を踏んだのか分からないが、ニコニコ顔が一瞬で引き攣り笑顔になる。やはり話すべき相手を間違えたようだ。
「やっぱこんなの人に聞く事じゃなかった」
「あのね、逆に質問なんだけど……よあけちゃんが本気出したらきよちゃんはどうなるの?目立たなくなっちゃうのかな…?」
「は?そんな事ない。よあけが何してようがきよちゃんはきよちゃんでしょ…」
「そういう事だと思うけどなぁ…本当は信用してないんじゃない…?よあけちゃんって天才だもんね。自分がちょっと頑張ったらきよちゃんのこと喰っちゃうもんね」
「……おまえ…」
相良の無神経な発言に思わず彼女を睨みつける。だが、彼女は全く怯みもせず、むしろ真顔で死んだ目をしていた。…みんなして何だと言うんだ。どうしろと言うんだ。
「私もね、ヒロっていう天才の幼馴染がいるんだけど…ヒロが手を抜いたりしてたらすっごく怒っちゃうし、悲しくなるよ。可哀想だと思われてるのかなって…そんな気持ちになっちゃうかなぁ」
「………」
「よあけちゃんがどう思ってるかなんて、きよちゃんからしたら知ったこっちゃないんだよ。だから本気でやってみたらいいんじゃないかな〜?あの、ほら…なんだっけ…切磋琢磨♪」
相良はすっかりニコニコ顔に戻っていた。きよちゃんの気持ち…確かに、よあけは自分の気持ちを押し付けていたかもしれない。それに、きよちゃんのことはちゃんと信頼してるけど、それでも……心のどこかでは……。
「ありがとう先輩。よくわかった」
「ほ、ほんと?ちゃんと伝わった?なんかいっぱい言っちゃってごめんね〜」
「う…撫でるのやめて…。よあけもバカじゃないし、理解できたよ。今までしてたの、きよちゃんへの冒涜的行為だったって事」
「そこまでは言ってないけどね〜…」
相良はよあけの頭をぐしゃぐしゃに撫でて部屋から出て行った。…よあけはバカじゃない。だからちゃんと分かる。考えられるんだ。考えられるが故に、今までの過ちが如何に酷いものだったのかも分かる。きよちゃんの為と言いながら、適当に逃げてたのかもしれない。何かに熱中する事。よあけが天才であることはよあけ自信が1番わかってるから…きよちゃんに嫌われたくなくて避けていた大切な事…それが1番きよちゃんを傷つけていた……のかもしれない。
「……よあけの好きなもの…」
作った曲や衣装を見下ろす。きよちゃんの言う通りだ。ここによあけは存在してない…。ずっとひとりぼっちにさせてたんだ…。
「よあけの好きな音楽は…ロック…かなぁ…」
「よあけの好きな服は…もっとフリルたくさんで可愛いやつ…」
「よあけの好きな色…ほんとに好きな色は……ピンク…」
「よあけは……きよちゃんの隣で踊りたい…」
次々と自分の好きなものを盛り込んでいく。こんなに自分の好きばっかりでいいんだろうか…と不安にもなるけど、実際好きなもので曲や衣装を考えるのは楽しい。どんどんと新しいよあけが出来上がっていく。
ーーー
「ねぇ〜!いつになったら寝るんだよ〜烏丸よあけ〜!!」
「………あ、おまえ…いたの…」
「いたよ!!ずっと居た!!!なんかすごい楽しそうにやってるから邪魔しないであげたんだねどさ、もう1時だよ…電気消していい?」
「…ごめん、いいよ消して。卓上ランプつけるから」
「まだやるの!?明日ライブ本番なんだからほどほどにしろ〜〜ぽゃしみ……」
明日までに完成させなければ…と思いつつ、ひたすら衣装を縫う。曲はなんとか完成したけど、衣装が間に合いそうもない。さすがのよあけでもこればっかりは……。
「…だめだ手縫い時間かかる。裁縫室に行こう…」
黒川が寝ている部屋でミシンを使うわけにもいかないので、衣装を持って急いで裁縫室に向かった。すると、数人が作業していた。みんなまだ出来上がっていないのだろう…。
「よあけちゃん…?」
「…!きよちゃん…」
まばらに座る中に、きよちゃんがいた。ケンカ?をしてから顔を合わせるのは初めてなので緊張した空気…が走ることもなく、衣装を間に合わせないといけないことで頭がいっぱいだった。
「よあけ、今から衣装しあげるから。新しいやつ。きよちゃんも…手伝って欲しい」
「えっ…あ、あたらしいやつ…?…見ても良い?」
「うん。はい、ここレース縫い付けて」
「わわっ!ぜ、全然違う……」
きよちゃんはよあけの考えた衣装に驚いているようだ。それもそのはず。今までとは全然違う、『よあけの好き』が詰まってる衣装だから。
「……可愛い!よあけちゃん、可愛いの好きだもんね!」
「うん。早く縫って」
「ええっ…!よあけちゃんから塩対応されたの、何気に初めてかも!縫うね!」
きよちゃんは何だか嬉しそうにしながら縫い始めた。…よかった…と心の中でホッとする。自分の好きで、きよちゃんがこんなに喜んでくれるなんて……。もっと早く気がつけばよかった。
「あと縫いながら曲聴いてね。これも作り直したよ。聴きながら振り考えて」
「曲も!?よ、よあけちゃんすごすぎる……聴く!縫う!考える!」
完全な無茶振りにも、文句言わずにやってくれる。すごいのはきよちゃんの方なのになぁ…のんて考えながらよあけも必死に縫い続けた。
そして1時間後…深夜2時。
「できた……」
「できたぁーーー!よかったぁ…!あ、振りも考えたよ!今から教えるね!」
「うん…ありがと……一緒に全体構成考えようね」
「オッケー!」
流石に疲れた…なんて言ってる時間もないので、完成した余韻に浸る前にきよちゃんから振り付けを教わって、全体構成についても話し合った。結局全部終わった時には3時を過ぎていた。
「ふぁ……眠い…きよ、明日起きられるかなぁ」
「よあけも…起きれないかも…そういえばきよちゃん、なんで裁縫室にいたの?」
「えっとね…これ…縫ってたんだ。よあけちゃんにあんなこと言ってから、自分でデザイン考えてみたけど…難しくて全然ダメだったよ」
きよちゃんはそう言って、リボンがたくさんついた布を見せてくれた。確かに上手とはとても言い難い出来だが、よあけが好きなものを作ってくれようとしたんだなってちゃんと伝わる。
「これ貰ってもいい?」
「うーんちょっと恥ずかしいけど…いいよ!あげるね」
「ありがとう。それじゃあ…おやすみ。また明日」
「おやすみ!絶対いいライブにしようね…!」
きよちゃんと強く誓い合った。きっと明日のライブは大成功すると思う。本当の意味で、Crystal Day Break の最初のライブだから。よあけたちは誰よりも強い。絶対に。