Eden茨♀はらませ 三人が本気の顔をして俺に迫るから、俺はデスクチェアを思わず引いた。
「……それは……じょ、冗談ですよね」
わざと明るく云おうとしたのにこえがひきつる。
「……ううん、本気」
「ほんとうのことだね」
「マジっすよぉ」
「は……」
妊娠する。俺が。そうしたらいいと、云う。
冗談じゃない。そんなお遊びでこの体を占有されてたまるか。
「冗談はやめてください。もう終わりにしましょう、それでいいじゃないですか」
俺は立ちあがって部屋を後にしようとした。
「話は終わりです、俺は失礼します」
「……茨」
「……っ離し……」
「茨にわからせないといけないから」
「そうですよ、茨」
「……っ!?」
もみくちゃになって、ダンスのように引かれたり押されたりした。抜け出そうとすれば――俺は後頭部の強い衝撃で倒れる。意識を失わされて、この人たちの本気を知ってしまった。
***
柔らかな感触に包まれていて、目を開ければ知らない天上だった。
「ここは……」
広い部屋に豪奢な装飾、どこかのホテルのスイートのベッドのようだ。
「……茨、おきた」
「閣下……殿下、ジュン……」
三人がこちらを向いて俺の意識を確かめる。さっきまでのこと――誰かを選ぶために妊娠させられると云うことを思い出して、俺はベッドの上で後ずさった。逃げ道はない。ぎしりとベッドが鳴る。
「……話し合ったんだけれど、茨、私たち三人と結婚すればいいって思う」
「なにを……」
「内縁の妻ってやつだね、法律婚は誰かとするにしても」
「順番に赤ちゃん産めばいいんすよ」
「は……」
真面目な顔でいうからこわい。善人の狂気はどこまでも透明で、その牙を見えなくする。
「……いいよね、茨。私たちはきみに……」
閣下が俺に迫る。俺はあっという間にマウントを取られ、手をからめとられた。
「……きみに愛を植え付けるよ」
***
(240626)